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【連載第3回 これから起きる“内部被ばく”の真実を覆う、放射能の「安心神話」】

放射線は低線量でも白血病や発がんに影響! 数多くの論文にICRPは無視

 ③東電福島原発事故が起こる直前の2011年3月に出されたマギール大学(カナダ・モントリオール)チームの論文(Eisenberg, et al:CMAJ.2011年3月)では、10〜40ミリシーベルトの被ばくでも10ミリシーベルト増すごとに発がん率が3パーセント増加するとされています。心筋梗塞になって、血管造影やCT等のエックス線を用いた検査・治療を受けた患者8万2861名を追跡調査したところ、1万2020名にがんが発生したという結果をもとに出された報告です。

 ④2012年の論文(Pearce, et al: Lancet 380:499-505,2012)では、CT検査を受けた子どもたちを対象として分析すると、50ミリシーベルト程度の被ばく線量で有意に白血病と脳腫瘍が増加し、約3倍になると報告されています。

 ⑤イギリスからは、自然放射線で年間5ミリシーベルトを超えると1ミリシーベルトにつき小児白血病のリスクが12パーセント有意に増加するという報告(Kendall GM. et al:2013 Jan:27(1):3-9,doi:10.1038/leu.2012.151.Epub 2012 Jun 5.)も見られます。

 さらにランセットHematology(オンライン公開日2015年6月21日)において、欧米の原子力施設で働く30万人以上の国際コホート研究の結果では、低線量でも白血病のリスクが増加することを報告されています。対象とした作業員の年間被ばく線量は、1.1ミリシーベルトで累積平均線量は15.9ミリシーベルトです。ちなみに、この研究は日本の厚生労働省も研究費を拠出しているものです。

 いくつかの国際的な論文を紹介しましたが、これらの報告に対して、「ICRP(国際放射線防護委員会)」は自ら科学的な根拠をもっていないため、反論することもできずに、無視するという姿勢をとっています。

【対談イベント】福島への思い 美味しんぼ「鼻血問題」に答える
雁屋哲(『美味しんぼ』原作者)×西尾正道(北海道がんセンター名誉院長)

福島から目を離さず、福島で暮らし・働く人々、福島で育つ子どもたちの現状を出来る限り科学的・客観的に検証し、今、私たちにできることを共に探る集会に。どなたでも参加できます。

日時:2015年12月23日(水・祝)午後1時
会場:一橋大学・東キャンパス2201教室(東京都国立市・最寄駅JR国立駅)
参加費:500円
主催:<福島への思い>実行委員会
お問い合せ:kuratengu@paw.hi-ho.ne.jp
      TEL 080-3396-1491(おがわ)

西尾正道(にしお・まさみち)

北海道がんセンター名誉院長、北海道医薬専門学校学校長,北海道厚生局臨床研修審査専門員。函館市生まれ。1974年、札幌医科大学卒後、独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター(旧国立札幌病院)で39年間がんの放射線治療に従事。2013年4月より現職。著書に『がん医療と放射線治療』(エムイー振興協会)、『がんの放射線治療』(日本評論社)、『放射線治療医の本音‐がん患者2 万人と向き合って-』(NHK 出版)、『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、『放射線健康障害の真実』(旬報社)、『正直ながんのはなし』(旬報社)、『被ばく列島』(小出裕章との共著、角川学芸出版)、『がんは放射線でここまで治る』(市民のためのがん治療の会)、その他、医学領域の専門学術著書・論文多数。

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