10月23日、消費者庁の消費者安全調査委員会は、毛染めによる皮膚障害についての報告書を発表し、注意を呼びかけた。それによれば、ここ5年間の皮膚障害の推移は毎年154〜238件、全治1ヶ月以上という重い症状のものは18〜44件となっている。
また、インターネットによるアンケート調査の結果、毛染めを行う場所は自宅が46.7%、美容院が36.8%、両方が16.5%。「毛染めの前にセルフテストを行ったことはあるか」という問いに対しては、68%もの人が「セルフテストは知っているが、実際に行ったことはない」と回答している。「毛染めの前にはいつも行う」と回答した人は、わずか2.3%だった。
皮膚障害を起こすのは医薬部外品に分類される酸化染毛剤だ。これは「染毛成分が毛髪の内部深くまで浸透することによって染めるため、(中略)色落ちが少なく長期間効果が持続する」というもの。毛髪の内部を酸化剤によって、酸化させ発色したり、色を定着させたりする。酸化染料には、パラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、トルエン−2、5−ジアミンなどがあり、これらの物質が皮膚障害のおもな物質になっている。
先の報告書には、毛染めによって起こる疾患の事例が写真付きで記されている。
「頭皮が赤くなって吹き出物のようなものが現れ、かゆみが出て、髪の毛が抜け落ちたりした」「顔面が赤く腫れ、浸出液が滴る状態になり、初めて医療機関を受診した」「ひどい手荒れのため、皮膚科医で治療を受けていたところ、耳たぶや頭皮にもかぶれの症状が出てきた」……。まれではあるが、アレルギーによって急激なショック状態を引き起こす、アナフィラキシーとなるケースもある。これは血液循環障害や呼吸困難を来し、死に至ることすらあるという。
こうした被害に遭いたくなければ、パッチテストはやはり毎回行うべきだ。
このほかに半永久染毛剤を代用するという方法もある。これは医薬部外品ではなく化粧品に分類されているもので、代表的な商品にはヘアマニキュアがある。皮膚障害となることが少ない代わりに、酸化染毛剤ほどの色持ちが期待できないという欠点がある。
面倒でも毎回、パッチテストをしてから酸化染毛剤を使うか。それともときどきヘアマニキュアで代用するか。またはリスクを避けるために染毛自体をとりやめるか——。皮膚障害を負うリスクとどう向きあうのか。それは利用者自身に委ねられている。
(文=編集部)