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【連載「快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病」第8回(最終回) 】

ハリウッドセレブのセックス依存症から学ぶ~回復への「12のステップ」

 このような変化をもたらす「12のステップ」とは、本来はアルコール依存症の自助グループのために作られたものをセックス依存症の人たちのために作り変えたものだ。その内容は以下のようになっている。

①私たちはセックス依存症に対し無力であり、思い通りに生きていけなくなったことを認めた。
②自分を超えた大きな何かが、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
③私たちの意志と生きかたを、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
④恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表につくった。
⑤神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
⑥こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
⑦私たちの短所を取り除いてくださいと、謙虚に神に認めた。
⑧私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
⑨その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
⑩自分自身の棚卸しを続け、間違ったときには直ちにそれを認めた。
⑪祈りと瞑想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
⑫これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをほかの人に伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

 この「12のステップ」に書かれている言葉は、宗教的な色彩も強く、日本人にとってはやや抵抗を感じる人もいるだろう。だが、ここで重要なのは、自分の欲求や葛藤といった個人的な感情を、より大きな何らかの存在にゆだねるという姿勢そのものだと言える。

 性に関する強迫的な観念を、「もう一段上の視点」から眺められるようになったとき、セックス依存症からの回復の道は始まっている。

連載「快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病」バックナンバー

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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