もちろん課題は多い。その一つが、病院が事前に患者が死亡するリスクを説明していれば、医療事故が起きたとき、院内調査をする義務は生じないこと。この判断は、医療機関が行える。さらに、このケースでは、院内調査の報告書を遺族に渡す義務がない。これに不満な遺族は、第三者に再調査を依頼できる。この再調査の依頼にかかる費用は2万円だ。
医療事故調査制度は、患者・遺族と医療機関との双方の利害がぶつかってできあがった暫定的な制度であり、これから改善していくことが決まっている。しかし、この制度によって医療訴訟が減ることは期待できるだろう。第三者機関が設置されたことで、真実を調査し、解決するための動きが法的に保障されたのだから。
そして、これまで立場が弱かった医療被害者が、医療機関と対等に議論できる土俵ができたことの意義は大きい。病院側も「患者の予期せぬ死」、つまり「医療の不確実性」を説明するきっかけにできる。この制度を、患者側と医療側の両方にとってメリットがあるものに育てることができれば、日本の医療事故の解決が大きく前進するだろう。
(文=編集部)