歯科用顕微鏡を導入後は患者との距離がより密接になったという。クリニックではまず最初に診査・診断をし、歯のX線写真をはじめ、顕微鏡で患部を隅々までチェックして問題のある部分を確認する。患者の訴えや臨床所見とこれらの映像を併せて診断する。患者への病状説明もこれらの映像を患者と一緒に見ながら行うので、患者自身の病気への理解が深まる。
「顕微鏡を導入しても、モニターが無いとしたら患者さんは何をやっているのか判らないのです。導入したての頃は、当院もまだモニターを入れていませんでしたから患者さんが戸惑ってしまうこともありました。顕微鏡で細かなところまでチェックするということは、肉眼で治療するときよりも患部の詳細が見えます。すると、慎重にすべきことが増えるので診療にも時間が掛かるのです。患者さんの中には”この医者はナンでこんなに時間がかかっているんだ”と不満な反応をみせることもありました」と三橋氏。
「当時はまだ顕微鏡の扱いにも慣れていなかったし、技術も不足していたので、今以上に時間がかかっていました。いま考えるとお恥ずかしいような治療もありましたよ。でも、見せることで患者さんも納得してくれるようになった。治療のプロセスを患者さんも見て、何が起こっているかを知ることができるわけです。患者さんがモニターを通じて自分の歯の状態を確認し、医師が何をしているかを知ることによって、信頼関係も自然と深まっていくのです」
(インタビュー・文=名鹿祥史)
三橋純(みつはし・じゅん)
医療法人社団 顕歯会 デンタルみつはし 理事長。1989年、新潟大学歯学部卒業後、東京歯科研究会、三橋歯科医院(新潟市)、荒木歯科医院(東京都大田区)を経て2000年にデンタルみつはし開業。2006年、日本顕微鏡歯科学会理事、2009年、日本顕微鏡歯科学会副会長、2010年より「顕微鏡歯科ネットワークジャパン」発起人・認定医。主な著書に『顕微鏡歯科入門』、月刊「歯界展望」別冊『顕微鏡歯科を始めよう』、『写真でわかるラバーダム防湿法』、その他、雑誌への掲載論文多数。
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