うつ病による休職者や退職者の高止まりが社会問題となり、多くの人が苦しんでいるなかで、職場におけるストレスの度合いを早めにチェックする調査が制度化されることは評価したい。
だが、このような機械的な調査が根本的な解決につながるのかというと、それは疑問だ。「調査をちゃんとやっているからうちの会社は大丈夫」という免罪符に使われてしまい、職場におけるコミュニケーションの柔軟さや、ゆとりのある仕事内容、勤務時間の短縮といった本質的な問題がむしろないがしろにされはしないかという懸念が残る。そもそも、調査対象となる人が会社に気を使って正直に回答しない可能性だって否定できないのだ。
折しも、安倍晋三首相は「一億総活躍社会」などということを言いだし、先の内閣改造で「担当大臣」まで任命した。「一億総活躍」というのは、要するに小さな子ども以外は、どんなにしんどくても休みたくても身体や心が疲弊しても働き続けろ、という意味につながりはしないのか?
そのように、走り続けなければふるい落とされてしまうようなハードな社会の動きこそが、疲弊するビジネスマンを大量に生み出しているのではないだろうか――。
厚生労働省の「ストレスチェック制度の概要」によると、このストレスチェックで高ストレスの通知を受けた労働者から申し出があったときは、医師による面接指導を行なうことが事業者の義務になるという。
願わくは、この「ストレスチェック調査票」が正しく使われ、休みたいときは休める社会にもっと近づくことを期待したい。うつ病の多くは、まぎれもなく「職場の過重負担」によって起こっているのだから。
(文=編集部)