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【シリーズ「子どもの心と体の不思議のサイエンス!」第5回】

赤ちゃんは視力が弱くてもモノを見分ける力がある! 母性本能をくすぐるDNAの不思議

243151498.jpg赤ちゃんの視力は弱いがモノは見えている

(shutterstock.com)

 生まれたばかりの赤ちゃんは、20cmほどの距離のモノしか見えないが、モノを認識する能力は視力よりも高い。

 たとえば、こんな実験がある。紙にヒトの顔の輪郭だけを描き、口の部分に入れた切り込みから舌をかたどった紙を出し入れする。すると、生まれたばかりの赤ちゃんは、どんな顔を見ても真似をして舌を出す。だが、2ヶ月後、目や眉や鼻のないのっぺらぼうの顔や、目や眉や鼻の配列が正しくない顔を見せて、切り込みから舌の紙を出し入れしても真似をしなくなる。

 つまり、目や眉や鼻を正しく描いた絵を見せて、切り込みから舌の紙を出し入れすれば、安心して真似をして舌を出すようになる。これは、脳の成長に伴って、赤ちゃんのヒトの顔についての知識が増え、目や眉や鼻の配列や位置が正確な絵だけを、ヒトの顔だと見分けているからだ。

 つまり赤ちゃんは、ヒトの顔を見分け、相手の体の部位が自分の体のどの部分なのかをちゃんと分かっているのだ。生後2ヶ月くらいの赤ちゃんが、世話をしてくれるお母さんの顔を穴が空くほどジーっと見つめるのも、ナルホドと合点がいく。

赤ちゃんはヒトの顔のイメージをしっかりと掴んでいる!

 赤ちゃんは本当にヒトの顔を見分けているのだろうか? 真似っこ遊びをして確かめてみよう。

 口は最初に発達する部分なので、口を大きく開けて見せたり、舌を出して見せながら、赤ちゃんを誘ってみる。赤ちゃんと視線を合わせて、大げさにアクションするのがポイントだ。

 新生児の赤ちゃんは気まぐれなので真似したりしなかったりするが、根気よくやっていくと、必ず口を開けたり、舌を出したり、真似をするようになる。表情の真似はするが、当然ながら楽しいとか嬉しいとかなど表情の意味は分かっていない。

 赤ちゃんが真似っこ遊びをするのはなぜだろう?

 生まれたばかりの新生児でも、ヒトの顔については大まかなイメージをもっている。赤ちゃんは生まれながらにして、世話をしてもらうための仕掛けを備えている。世話をしてくれるヒトであるお母さんを見分けなければ、生きられないことを知っている。不思議だ。

 人類生物学や小児科学の知見によれば、お母さんが赤ちゃんに抱く強い愛着心も、頬ずりしたり、あやしたりする親密なスキンシップなどの母性的行動も、母性という本能に予め組み込まれた自然な心情であり、かつ自発的な反応だ。つまり、母性という本能には、顔が丸く、頭や目が大きい特長をもった赤ちゃんを「可愛い」と認識するようにDNAに書き込まれている。

 この母性に関わっているのは、乳腺を発逹させたり、母性行動を誘導するホルモンのプロラクチンや、赤ちゃんが乳首を吸うと分泌される愛情ホルモンのオキシトシンだ。これらのホルモンが、幸福感や恍惚感を与えるため、母性が刺激され、母性行動に現れる。

 一方、赤ちゃんは、未熟で何もできないので、世話をしてもらえるように可愛い容姿で母性本能をくすぐる。赤ちゃんがニッコリする微笑み(生理的微笑)は、母性本能をくすぐるため、お母さんの愛着心は自然と高まる。赤ちゃんのDNAにも、母の愛情を勝ち取れるように自然に行動するプログラムがインプットされている。

 このように、赤ちゃんは、ヒトの顔を見分けて真似をしたり、環境に少しずつ慣れながら、スクスクと成長して行く。
(文=編集部)

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