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【連載第5回 眼病平癒のエビデンス】

子供たちの近視の進行は予防できるか? 近くの物を見続けないことが何よりも重要

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子供の近視は抑制できる shutterstock.com

 育ち盛りの小中学生は、目の使い方により、急激に近視が進行することがあります。通常、小中学校の教室では、最前列の席で0.3、最後列の席で0.7の視力がないと、黒板が見づらいといわれています。また、裸眼視力(メガネをかけない視力)が0.1以下だと、メガネがないと日常生活にも支障をきたします。

 では、子供たちの近視の進行を抑制するにはどうしたらいいのでしょうか?

 インターネットや雑誌などで、視力回復の訓練や目薬、特殊なコンタクトレンズの話を目にしたことがあるかと思います。しかし今回は、そのような特殊な方法ではなく、普段の日常生活でも実行できる予防法を、最近の研究をもとに紹介します。

子供の近視は環境因子が影響する

 近視の進行には、遺伝因子と環境因子が関与しているといわれていますが、小学生以降では環境因子が特に関係してきます。

 環境因子としてまず挙げられるのは、読書、勉強、ゲームなど、近くの物を見続ける作業です。学校の視力検査で、去年は1.5だったのに今年は0.5になったという子供たちに聞いてみると、そのほとんどが勉強、読書、ゲームを長時間やったと答えます。

 近くの物を長時間、見続けると、眼軸長(眼球の前後の長さ)が長くなり、近視が進行します。ただし、最近の研究では、近くの物を見続けるの時間を減らせば、若い人ほど眼軸長が戻る、つまり近視が改善する可能性が高いという結果が出ています。近くの物を長時間、見続けないで、小まめに休憩を入れれば、近視の進行を抑制できる可能性があるのです。

 また、最近の研究では、たとえ親が近視でも、1日2時間以上、屋外で活動している子供は、1日1時間未満しか野外で活動していない子供に比べ、近視が進行しにくいことが報告されています。なぜ屋外で活動する時間が長いと近視が進行しにくいのか? その理由は、身体を動かすことで焦点が近くや遠くに移動して固定されないことや、明るい光が網膜に良い刺激をもたらすことなどが考えられています。

 さらに、近くの物を見ている時間が長くなると、網膜の中心部の眼球が長く変形することもわかってき。つまり眼球がいびつな形になり、近視が進行するだけではなく、視力が出にくい目になることがあるのです。網膜全体にピントを合わせるためにも、近くの物を見る作業を中断して遠くの物を見て、広い視野を使うことが重要となります。

 近年では、子供たちが気軽に遊べる広場などが少なくなってきたり、低年齢から勉強をする必要があったり、ゲームをする時間が増えてきたりと、近視が進行しやすい環境となっています。短時間でも外で活動する時間を作る工夫が望まれます。また、最近は親子で共通の趣味として一緒にゲームをしている方々をよく見かけます。しかし、ゲームを中断して話しをしたり、外で遊んだりすることを親御さんから率先して行うことで、子供の近視の進行抑制にはプラスとなることをご理解ください。


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高橋 現一郎

高橋現一郎(たかはし・げんいちろう)
東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授
1986年東京慈恵会医科大学卒業、98年東京慈恵会医科大学眼科学教室講師、2002年Discoveries in sight laboratory, Devers eye institute(米国)留学、06年年東京慈恵会医科大学附属青戸病院眼科診療部長、東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授、2012年より東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科診療部長。
日本眼科学会専門医・指導医、東京緑内障セミナー幹事、国際視野学会会員。厚労省「重篤副作用疾患別対応マニュアル作成委員会」委員、日本眼科手術学会理事、日本緑内障学会評議員、日本神経眼科学会評議員などを歴任。

連載「眼病平癒のエビデンス」のバックナンバー

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