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【連載 病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」 第2回】

EDになりたくなければ禁煙すべし!? ED治療に禁煙は不可欠!

 EDの治療薬として華々しく登場した薬が「バイアグラ(Viagra)」だ。この薬は、VIPとは別の勃起誘発物質(一酸化窒素によって細胞内に増加するサイクリックGMP)の分解を防ぐことで効果を発揮する。つまり、勃起を長く保てるのだ。

 この命名はなかなかしゃれている。Viagraとは、生命を意味する「vita」とナイアガラ=「Niagara」の合成語。ナイアガラの滝のように激しい"いのち"を与える薬なのだ。

 山之内製薬から脳代謝賦活剤として発売されている「エレン」という錠剤は、勃起する副作用が知られている。この効用は、どうやら陰茎におけるVIPの放出作用によるらしい。滋養強壮によいとされる朝鮮人参エキスにも、VIPに類似した物質が含まれているという。

 しかし、VIP軟膏なる奥の手は、残念ながら無効である。なぜなら、陰茎海綿体組織は、結合組織性の厚い白膜で包まれており、塗り薬の成分は中までとうてい染み込まないからである。

 VIPを過剰に産生する腫瘍が膵臓や副腎髄質に発生すると、大量の水様性下痢が認められる。国立がん研究センターの、とある先生の談話を最後に紹介しよう――。

 あるとき、VIP過剰症状を示す男性患者さんに尋ねた。「もしかして、立ち(勃起)ませんか?」と。すると主治医と患者さんの双方から、ひどく叱られたそうだ。「こんなひどい下痢なのに立つわけないだろう!」。

堤寛(つつみ・ゆたか)

つつみ病理相談所http://pathos223.com/所長。1976年、慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍。2001〜2016年、藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。2017年4月~18年3月、はるひ呼吸器病院・病理診断科病理部長。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書、電子書籍)『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス、電子書籍)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)、『患者さんに顔のみえる病理医からのメッセージ』(三恵社)『患者さんに顔のみえる病理医の独り言.メディカルエッセイ集①〜⑥』(三恵社、電子書籍)など。

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