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【医療用ロボットの進化と挑戦・第3回】

メイド・イン・ジャパンの医療用ロボット・機器の実力はいかほどか?

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医療機器として初めて欧州の工業規格であるCEマークの認証を受けたHAL(サイバーダインのHPよりshutterstock

 これまで医療用ロボットの現状と歴史を見てきたが、今回は日本発の研究成果について紹介する。

 限られた術野を限られた視野から把握し、いかに精密、精確、迅速に操作できるか――。それが内視鏡手術支援ロボットの生命線だ。日本で研究開発され、臨床で利用されている内視鏡手術支援ロボットとしては、「ニューロボット(Neurobot)」などが知られている。

 ニューロボットは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、信州大学脳神経外科、東京女子医科大学脳神経外科、日立製作所が共同開発した脳外科手術支援用のマニピュレータシステムだ。開発がスタートしたのは1997年。杉田虔一郎教授が考案した脳動脈瘤手術用の「杉田クリップ」をはじめ、頭部固定装置、術者用の椅子や手術台などの装置・器具、手術方法の開発とともに、ニューロボットは様々な脳腫瘍や脳血管障害の治療に役立ってきた。

 2002年8月、ニューロボットは、マスタースレーブ型の手術支援ロボットとしては世界で初めて脳腫瘍摘出手術に成功した。マスタースレーブ型とは、術者の手元にあるマスターアームの動きをスレーブアームが忠実にトレースする遠隔操作方式だ。

 2006年には、早稲田大学理工学部や東京女子医科大学脳神経外科と共同で、自動追従型手台ロボット「エキスパート(EXPERT)」の開発研究にも着手。エキスパートは、各関節の動力にモーターを使わず、バネの力とブレーキ解除の制御によってロボットの動作を支援し、術者の腕のふるえや疲労を緩和して操作性をアップさせている。

 さらに、ニューロボットやエキスパートの研究開発で培った経験や知見を活かし、2011年からは、脳外科手術中に脳などの組織を保持する「組織把持ロボット」の共同研究を、東京女子医科大学先端生命医科学研究所とスタート。組織把持ロボットは、術者の「三本目の手」として術者をサポートし、顕微鏡下の手術操作をさらに向上させるという。

 ちなみに日本では、内視鏡手術支援ロボットは医療保険を適用されていなかった。しかし、名古屋市や大阪市などの一部の病院が、健康保険の診療報酬を請求するケースがあったことから、2012年4月からは、前立腺がんのロボット手術にのみ健康保険が適用されている。ただ、現在まで米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けた国産の内視鏡手術支援ロボットはない。

歩行が困難な患者を支援する世界初の装着型ロボットHAL

 2013年8月、日本発の医療用ロボットが世界の脚光を浴びた。ロボットベンチャー企業のサイバーダインが開発した装着型ロボットHAL(Hybrid Assistive Limb)が、医療機器として初めて欧州の工業規格であるCEマークの認証を受けた。HALは、身体機能を改善・補助・拡張できる世界初のサイボーグ型ロボットとして、世界知的所有権機関(WIPO)の国際特許であるNotable Inventionにも認定された。

 HALの重さは約14kg。脳から出る微弱な信号や人が歩く速度などを感知する生体信号、加速度センサーなどを搭載し、脳卒中の症状や脊髄損傷を持つ患者の足の運動障害を改善する。患者が手足を動かすと、脳の電気信号を足の皮膚表面で検知し、モーター制御によって思い通りに手足が動かせる。脊髄損傷や脳卒中の患者が装着すれば、脳や足などの衰えた筋肉機能を回復させる効果があるという。

 サイバーダインの山海嘉之CEO(最高経営責任者)は「モーターの電子回路などを欧州で医療用として認可されるよう130カ所を再設計した。医療機器市場の34%を占める欧州への輸出は大きなステップだ。HALが世界中でグローバル展開できる日が来た。日本発のロボットが世界展開する意義は大きい。世界の医療研究やカリキュラムの中に組み込めるように努めたい」と熱く語った。

 欧州に輸出・販売するためには、欧州の工業規格であるCEマークを取得しなければならない。CEマークは、EEA(欧州経済領域)やEU加盟国の基準を満たした製品に付けられる認証マーク。HALのCEマークを認証したのは、ケルン市の第三者認証機関テュフラインランドだ。ドイツ最大の労災病院を経営するBGグループ(約4400床)は、HALに労災保険を適用している。

 日本では国立病院機構新潟病院を中心に、神経や筋肉の難病で歩行が困難な患者を対象に、医師主導の臨床試験がスタート。160の病院で約400台が研究・臨床試験中だ。承認が得られれば、国内でも医療機器として普及するだろう。HALは、福祉・医療分野の動作支援、工場の重作業支援、災害現場のレスキュー活動支援など、応用範囲は広い。

 今回は、日本で活躍する医療ロボットとして、内視鏡手術支援ロボットのニューロボットと装着型ロボットHALを紹介した。次回は、日本で活躍するダヴィンチサージカルシステムにスポットを当てよう。
(文=編集部)

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