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【連載第5回 サプリメントの天国と地獄】

サプリメントの天然原料と合成原料にはどんな違いがあるのか?

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天然原料と合成原料はどっちを選ぶべき?shutterstock.com

 

 サプリメントを製造するには、もちろん原料が必要ですが、その原料は天然由来のものと合成原料の2つに大別され、それぞれにメリットとデメリットがあります。
 まずは見分け方です。商品が天然原料か合成原料かはパッケージの原材料表示で分かります。天然原料の場合は、野菜や果物など食物の名称、例えば「アセロラ果汁、ビール酵母、酵母(ビタミンB12含有)、大豆濃縮物」といった表示になります。一方、「ビタミンB6、ビタミンC」など成分の名称そのものを使用しているときは合成原料となります。

 天然原料の特徴としては、栄養素が体の中で効率的に使用される可能性が高い点が挙げられます。これは、生物の中で栄養素は単体で存在するわけでは無く、他の栄養素と連携して働くことがほとんどであるためです。このため、一つの栄養素の周りにはそれと協同して機能する栄養素も存在していることが多くなります。天然原料由来の栄養素を取り入れると、他の栄養素もまとめてとることができるメリットがあります。このため、体の中でも栄養素が連携して、より効率的に働く可能性が高いのです。
 
 しかし、天然原料にはこのような優れた点がある一方、コストが高くつくという欠点があります。大量生産された人工の成分と違って、元々値段が高く、単一の栄養素という視点でみると濃度が薄く、植物や魚介、動物など自然の産物を原料にすることから、どうしても費用がかかります。
 
 また、サプリメントの原料に食物アレルギーのある人は、摂取することが出来なくなります。自分の体質に合わない植物や卵や牛乳などを原料として使われていないか、きちんとパッケージを確認した上で使ってください。また、本人も気付いていない「遅発型フードアレルギー」の方は、「なかなか効き目が出てこない」とか、「サプリメントを摂取すると、却って体調がすぐれない」などという日が続いた場合は、いったんサプリメントの服用をやめた方がいいと思います。

安価すぎる粗悪な合成サプリメントは危険

 では、合成原料はどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。人工的な化学反応を利用して作られる合成原料は、比較的安価で、一つの栄養素を単体として高い濃度で生産することが可能です。ただ、技術力や資本力などによって品質に大きなばらつきがあり、安さだけを追及すると、非常に品質の悪いものをつかむことになりかねません。

 例えば、サプリメントとして人気の成分であるビタミンCについてみると、そのほとんどが中国製で生産されています。医薬品として使われる質の高い製品を、衛生管理に優れた環境で、高い技術と設備によって生産する工場ももちろん存在します。しかし、工場には「ピンからキリまで」ありますから、当然のことながら、低品質の製品しか作れない工場も数多くあると思われます。同じビタミンCといっても品質の違いによって値段はキログラム当たり数百円から数万円まで大きな格差があるのです。
 
 そして、価格の低い製品はとてもお勧めする気になれません。なぜなら、何段階もの化学反応のプロセスを経てできる化合物は、技術や設備の違いが如実に現れ、粗悪品はビタミンCと言いながら、実は「似て非なるもの」も含まれている可能性があるからです。


連載「サプリメントの天国と地獄」バックナンバー

田村忠司(たむら・ただし)

株式会社ヘルシーパス代表取締役、日本抗加齢医学会会員、NRサプリメント・アドバイザー(一般社団法人 日本臨床栄養協会)。1988年、東京大学工学部産業機械工学科卒業後、株式会社リクルートに入社。10年間にわたり、通信事業を中心に経営戦略、新規事業立案、マーケティング戦略立案に従事。1998年、「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長として活動。2006年、「医療従事者が自信を持って使えるサプリメントを提供して欲しい」との医師・薬剤師からの要請に応えて、医療機関専用サプリメントの専門メーカー株式会社ヘルシーパスを設立。栄養療法に取り組む医師・歯科医師へのサポート・情報提供のため、日々、全国各地を飛び回り、楽しく仕事に取り組んでいる。著書に『サプリメントの正体』(東洋経済新報社)がある。

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