「朝食抜きをすすめる医師もいるじゃないか!」と反論が聞こえてくる。ダイエット方法として、本来おすすめの夕食を軽くするのは、夕食を一日の楽しみとしている現代人においては無理だと、手軽に摂取カロリー量を減らす方法として朝食抜きをすすめる医師も確かにいる。しかし、それはベストの方法ではないことはすすめる医師自身が知っている。
また人類の歴史を振り返ると、長い間1日2食だったことを根拠に、朝食抜きをすすめる医師もいる。だが1日2食だった時代と、1日3食の現在と、どちらのほうが人類は長生きしているだろうか? (若くして死んだ)昔のほうが(高齢者に多い)生活習慣病が少なかったから、当時の食事のほうが正しいという理論はおかしくないだろうか?
「だが血糖値が高くて何が悪い!? 糖尿病だって痛くもかゆくもないさ」
実はこう考える人が多い。健康診断で高血糖を指摘されても、かなりの数の人が医療機関に行こうとしない。糖尿病と診断されて治療を始めたのに、途中で治療を投げ出してしまう人も多い。そして、しばらく後にそのことを深く、深く、後悔することになる。
失明、下肢切断...それは突然に
糖尿病が増え続けている理由として、糖尿病でも自覚症状がほとんどないことが挙げられる。「自分の体のことは自分が一番わかっている」と思う人は多い。しかし、眠くても眠らずに夜中まで遊んだり、満腹になっても「別腹」と言って食べ続けたり...そんなに体の欲求にうとくなった現代人が自分の体のことをわかるはずがない。
そもそも糖尿病の初期の自覚症状は実に地味だ。のどが渇く、尿の量が増える、疲れやすい...。とても病気のせいだとは思えないだろう。血中の糖を取り込めなくなると、最初はむやみに空腹を感じて食べ過ぎて太るのだが、さらに症状が進むと、身体が栄養を取り込めなくなり、体重が減っていく。深刻な状態になっているのに、少しでもダイエットを心がけていれば「ちょっと気をつけただけで、ダイエット効果がこんなに上がった」と喜んでしまう。
胃もたれや便秘、立ちくらみがして、こむらがえりを起こしやすくなり、手足のしびれを感じるようになったら、糖尿病が進行して自律神経障害や末しょう神経障害という合併症が始まっている。それでも糖尿病でなくてもありがちな症状だから、大して気にせず、朝食抜きやながら食い、夜遅くの食事、食べ過ぎを続ける。すると、ある日、足の裏に画びょうが刺さっているのに何日も気づいていなかったことを知る。怪我を見てもらおうと病院に行くと、時すでに遅く、足は壊疽を起こしていて切断することになる。
最近「まぶしいなあ」とか「目がかすむ」と思っても、疲れ目ていどに思って、放置する。あまりに見づらくなってきて、眼科医に行くと、糖尿病網膜症と告げられ、至急、内科医を受診するように言われる。重い腰を上げて、内科医を受診して、治療をそれから始めても、糖尿病の進行は急には止まらないので、まもなく失明。20~60歳の中途失明の最大原因は糖尿病なのだ。
たかが「ながら食い」、たかが「朝食抜き」は、たかが「のどの渇き」から、たかが「こむらがえり」を経て、たかがとは言えない「下肢切断」へ、たかが「目のかすみ」を経て、たかがとは言えない「失明」へつながっている。糖尿病になってしまったら、厳しい食事制限を来る日も来る日も続けなければならなくなる。糖尿病になる前に食生活を変えることが結局一番楽なのだ。糖尿病への道を引き返さなければ、怖い未来が待っている。
(文=編集部)