沖縄の若年層の未来が危ない
沖縄県は長らく「長寿県」として知られてきた。いまでも沖縄と言えば「長寿」をイメージする人も少なくないだろう。しかし、それはいまや昔の話。5年ごとに発表される都道府県別平均寿命で、沖縄の男性は1990年に5位に転落、1995年に4位と少し戻るも、2000年には26位と大幅に転落した。この沖縄県の健康長寿の危機的状況は「26ショック」、または「沖縄クライシス=危機」とも呼ばれ、各方面に大きな衝撃が広がった。女性はその後も都道府県別平均寿命1位を維持していたものの、2010年には遂に女性も3位に転落した。男性も落ち続けて30位。
特に問題とされているのは、高齢者を除いたときの寿命の短さ。実は沖縄県の65歳末満の死亡率が2010年に全国一となったのだ。65歳未満だけで見れば、沖縄県は長寿県どころか、短命県ナンバーワン。沖縄では若い世代ほど死亡率が高い。若くして亡くなる早逝率ナンバーワン県。それでも平均寿命がさほど低くないのは、長寿の高齢者の力によるもの。つまり現在、沖縄県の平均寿命を押し上げている高齢者が亡くなれば、沖縄県は平均寿命で最下位に落ちるだろう。
●沖縄を長寿にしたのも、短命化させたのも食事
そもそも沖縄はなぜ長寿県だったのか?
戦前の沖縄の食事は非常に質素で、主食も白米を常食する人はまれで、おおかたの沖縄県民の主食は、繊維質が豊かな芋だった。中国の影響を受け、「医食同源」の考え方「クスイムン」に基づき、体に良いものを食べようという意識が高かった。他県のような漬物文化がなく、塩分の摂りすぎもなかった。昔から豚肉はよく食べてきたが、下茹でして脂を落として食べていた。そして野菜や海藻、魚、豆腐などの大豆食品をよく食べてきた。
ではなぜ長寿県だった沖縄の短命化が急速に進んだのか?
沖縄でこの数十年の間に急速に増えた死因が循環器系の疾患、つまり心筋梗塞や脳梗塞など血管の問題がもたらす病だ。これらの病気を引き起こすもの、それは肥満が根幹にあるメタボリックシンドロームだ。沖縄県は現在肥満者の割合が45.2%で日本一肥満者の多い県でもある。
アメリカ占領下にあった1960年代から、米軍の軍用食料から供出されたコンビーフハッシュやポークランチョンミートの肉加工品が大量に沖縄にもたらされ、急速に食の欧米化が進んだ。ハンバーガー、ホットドッグ、ピザ、ビーフステーキ、タコスといったアメリカの食事が早い時期から普及し、ファストフードのチェーン店が早くにオープンして広まった。戦前は野菜やイモ類など繊維質の多い食材を食べ続けてきた沖縄県民が、この頃から高カロリー・高脂肪の食事をするようになった。
戦後50年余りもの間、沖縄県民の脂肪摂取量は、全国に比べて、およそ5%も多い。他県ではお酒を飲んだ後の締めにはラーメンなど炭水化物を接種するが、沖縄県ではなんと飲んだ後の締めは脂たっぷりのステーキ。
かつては野菜をたくさん食べていた沖縄県民も、いまでは野菜を食べなくなり、野菜摂取量は男性が全国で45位、つまり下から3位、女性が44位、つまり下から4位という状態。ちなみに男性のワースト1位の徳島県と2位の香川県は糖尿病の死亡率がワースト1位と2位。沖縄県の死亡原因の第一位も糖尿病。野菜不足が糖尿病をもたらし、血管をダメにしている。
(文=編集部)