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【連載第1回 「薬は飲まないにこしたことはない」薬剤師 宇多川久美子】

日本人は「薬に頼りすぎ」で「副作用」に無頓着! 病院でも「病院では薬ありき」の診療が

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 「日本人は薬に頼りすぎ」といわれるが、その理由のひとつに、国民全員が平等に医療を受けられる国民皆保険制度がある。医療費負担が少なく、必要なときに必要な医療にアクセスできるこのシステムは、世界的に見てかなり素晴らしいものだ。だが、この利便性の高さが、「少しでも体調を崩したら病院に行けばいい」という安易な考えを促している。

 また、タレントを使ったテレビCMが頻繁に流れていることも、薬を身近に感じる理由といえるだろう。耳に残るキャッチコピーとともに、「病気になったらこの薬を飲めば大丈夫!」というポジティブなイメージが人々に刷り込まれていく。このように、病院に行けばたいてい薬を処方してもらえるし、街中のドラッグストアでも一般薬が簡単に手に入る。薬が日本人の生活に定着し、「病気になったら薬を服用すれば治る」という考えを持つのは当然なのかもしれない。

 さらに、病院では薬ありきの診療が珍しくない。そもそもなぜそのような診療が行われているのか。日本の教育システムでは、医者は医学部で6年、国家試験合格後2年以上の臨床研修を受けた後実務に就くが、この間薬に関しては1週間に1コマ程度しか学ぶ機会はない。本業の医学に加え、薬の膨大な知識を詰め込むことはかなり大変なことだ。

 そのため、医師は診療の際に、ガイドラインなどを参考にしながら症状に対する治療法を決定し、そこに記載されている薬を処方することになる。これが"薬ありき"となる所以である。

 薬が簡単に手に入れば、「頭痛持ちだから」「慢性的に胃が痛いから」と薬を持ち歩くようになり、少しでも不調を感じると薬に頼ってしまう生活になる。薬がすぐに症状を軽減してくれるなら、それにこしたことはない。しかし、なかには具合が悪くなる前に気休めとして、お菓子のような感覚で薬を飲む人もいる。これは看過することのできない問題である。

副作用の無い薬は無い。薬と毒は表裏一体

 体内に入った薬は、不具合のある箇所にだけに作用するわけではない。血流に乗って全身を巡り、治療を必要としない組織にも同じような影響を与える。患部にピンポイントで働く作用を主作用、患部以外で働く本来の目的ではない作用を副作用というが、主作用があれば自覚症状の有無にかかわらず、必ずどこかで副作用が生じているはずだ。

 自然界の生き物である人間が、人工的につくられた合成品である薬を体内に取り込んでも、うまく体に馴染ませるのは難しい。また、薬のなかにはプラスチックの原料となる石油から作られているものも多く、薬は人間にとってまさに異物以外の何ものでもない。その異物が良い作用を及ぼせば薬と呼ばれ、悪い作用を及ぼせば毒として敬遠される。薬と毒は裏表の関係にあり、詰まるところ同じものなのだ。

 近年、無農薬野菜に強い関心を持ったり、防腐剤や保存料に過剰な反応を示したりなど、口の中に入れるものにこだわりを持つ人が増えているが、そんな彼らでさえも、薬に関しては"身体を治すもの"という強い固定観念に縛られている。これからは、「薬は合成品で、場合によっては毒にもなる」という認識をしっかり持つことが、大きな課題となるだろう。 


連載「薬は飲まないにこしたことはない」バックナンバー

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士(米AHCN大学)、ボディトレーナー、一般社団法人国際感食協会代表理事、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。1959年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師として医療の現場に身を置く中で、薬漬けの医療に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を活かし、薬に頼らない健康法を多方面に渡り発信している。その他、講演、セミナー、雑誌等での執筆も行っている。最新刊『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』(光文社新書)が好評発売中。

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