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【緊急掲載「日本のコロナ対応は政府の無能と凶暴を映す鏡」PART1】

厚労省医系技官の怠慢と政治家たちの甘い判断が生んだ醜悪な状況

安倍政権から続く失策

 五輪の2カ月前なのに、専門家からダメ出しを食らう後手後手の菅政権の機能不全ぶりは異常だが、それは今始まったことではない。日本のコロナ対策をみれば、サポタージュを繰り返す厚労省の医系技官を初めとする官僚と、それを制御できず危機管理能力のみじんもない政治の酷さは、安倍政権から始まり、菅政権に継承され、今も拡大再生産を続けている。
 
 そもそもの失策は水際対策。昨年1月に中国で新型コロナの感染拡大と死亡が伝えられたが、中国からの入国制限はただちに行われず、大量の観光客が流入した。習近平国家主席の訪日を控え、判断が遅れたと指摘されている。安倍首相が東京五輪を意識しつつ外交的ビッグイベントを優先したのは明らかだろう。
 
 国民に対する医療的対応も最初から酷いものだった。コロナ感染が始まった2月、厚生労働省と専門家会議は相談・受診の目安として「37・5度以上の熱が4日以上続く」場合との見解を示し、これが日本の対コロナ医療の規範となった。未知のウイルスに感染し、それも症状が重篤になるケースが少なくない中、高熱が出ても4日我慢しろというのは、非人道的というしかない。国民の命より医療崩壊を懸念して保身に走る厚労省の医系技官たちの厚顔ぶりと、それを許す安倍首相以下閣僚たちのリーダーシップのなさ。この見解によって大切な家族を奪われ、遺骨となって病院から帰還したその姿に絶望した遺族らは、今なお怒りが続いているはずだ。
 
 ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京大特別教授によると、医療の基本は「予防」「診断」「治療」の三つだという。中でも診断とひいては予防につながる最も有力なツールはPCR検査だ。しかし、厚労省の医系技官とそれに近い専門家たちは、非感染者が陽性と判定される「偽陽性」の問題を持ち出し、PCR検査の拡大を意図的に阻止してきた。
 
 検査によって陽性者を保護・隔離し、非陽性者が社会・経済活動を進めることで世の中を回していく戦略は早くから提唱され、中国や韓国、台湾、オーストラリアなどでは入国制限の徹底と合わせて検査体制を充実させ、感染を抑え込んできた(台湾は最近、感染拡大が著しいが)。その現実を見ながら日本は官僚たちの怠慢と、政治のリーダーシップの欠落で東アジア最悪の感染状況となっている。
 もちろん現在は当時よりも大幅に検査能力は上がり、抵抗していた専門家もある程度、社会的検査の有用性を認めるようになったが、それは政府があまりに検査体制を拡大しないため、低価格の民間検査が台頭したことが大きい。先進的な取り組みでコロナを抑え込んできた国では誰でも気軽に無料で検査できる体制を整備したが、日本ではごく一部の自治体を除いていまだにできていない。コロナ対策の中核を担う社会基盤をいまだに整備できていない日本政府の責任は重大だ。

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