ハワイのABCストアーで土産品として大人気の『PatchMD』
年末年始はハワイでゆったりと過ごします、という向きには今回のコロナ禍はさぞがっかりとしたことだろう。
渡航前に検査を受けて陰性と判定された場合14日間の自主隔離を免除する「事前検査プログラム」に、米国以外では初めて日本発が加えられ、さらには日本出発前にハワイ州が指定する病院で検査を受け、陰性が証明されれば自主隔離は完全に免除(0日間)されるようになったものの、訪問者は激減だろう。
日本から毎年160万人近くが渡航し、その消費総額は約2億ドル以上というビッグマーケットだが、ハワイ州観光局による最新の集計では、去年11月の日本からの訪問者は前年と比べ99.6%減だというからその影響のすごさがわかる。
1日1回肌に貼るだけで約8時間の効果が持続
今回はコロナ禍が早期に終息することを願いつつ、ハワイ愛好家の間で人気話となっている新土産「貼るサプリ PatchMD」を紹介してみる。
『PatchMD』は様々な種類のサプリメントを肌に貼るだけで体に取り込める商品。ドラッグストアで売っているふつうのサプリメントと同様に、誰でも利用できる。毎食後に水で飲むといった従来型のサプリメントにつきものの煩わしさがないため、米国では比較的若い世代を中心によく売れているという。
ハワイ土産として人気になったのは、ハワイ生まれのコスメ&スキンケアブランド「エレメンタリスト」の宗村真樹社長がハワイでの販売に力を入れたのがキッカケ。ハワイ、グアム、サイパン、ラスベガスの大型有名店ABC STOREなどでも販売されているため土産としても観光客から大人気の商品となっているのだとか。
「アメリカでは未病改善やアンチエイジングのためのサプリとして人気が高く、バッグに忍ばせている人も多い。アンチエイジングだけでなく二日酔い防止、不眠症改善、ダイエットなど貼るだけで体に取り込める成分や効果の多様性も人気の理由です」と宗村社長は説明する。
そのメリットと聞くと、「飲み込まなくてよいので、サプリ独特の香りや味が苦手な人、形状が大きすぎる、粉末が苦手な人などでも手軽に習慣化できることです。さらには胃腸に負担がかからないことです。胃腸が弱い人でも必要な成分を皮膚から摂取できることが特徴です。錠剤のように1日に何度も飲む必要がなく1日1回貼るだけで済む手軽さも人気の理由でしょう。“飲み忘れ”もありませんし、薄いシート状なので持ち歩くのにもとっても便利です」とのこと。
もともと米国のPatchMDは2009年4月に設立された会社。創設者のアール・ヘイリー氏は肥満治療を受けている友人の困難を目の当たりにし、人間の体に必要となる重要な栄養素を届けるシート型サプリとしてPatchMDを考案。非常に効果的があり便利で革新的だとして米国で話題になっていたものに宗村社長が「これは画期的だと思いました」とハワイでの取り扱いを決めた。
一度貼ったパッチは5分ほどで成分の吸収が始まり、その後6~8時間、体内に有効成分を補給し続けるという。ただ水には弱いので入浴やプールなどの予定がある場合は貼るタイミングを考える必要があるかもしれない。
40年以上の歴史を持つ経皮吸収パッチの研究開発
肌に貼る医薬品としてよく知られるのは「モーラス」や「ロキソニン」などの消炎鎮痛剤だろう。この種の経皮吸収パッチは 1979年、制吐剤のスコポラミンのパッチが承認されて以来、様々な種類が開発され、禁煙補助のニコチンパッチや骨粗鬆症を防止するためのエストロゲンパッチなどもある。
安定した血中濃度の維持が可能で、服薬コンプライアンスの向上が期待できるなど、多くのメリットを持つため、最近では従来の貼付剤が対象としてこなかった治療領域にも広がりを見せている。例えばアルツハイマー型認知症、パーキンソン病、過活動膀胱、高血圧への添付剤などの承認もそうした利点に注目して開発されたものだ。
将来的にはこれまで注射や点滴で投与されていた抗がん剤を自宅で投与できるようになる可能性もある。またインスリン製剤に活用すれば、重症の糖尿病の患者などはは日々の注射から解放される日が来るかもしれない。
「日本のような国民皆保険制度がないアメリカでは、保険未加入の場合、高額な医療費の負担が必要になります。このため病気を積極的に予防する、あるいは普段から健康に留意するという意識が高いという特徴があります。病気の予防のため成人の6割以上がサプリメントを愛用するほど生活スタイルとして定着しています。アメリカで様々な種類の高品質なサプリメントと最先端の技術革新が起きるのはそうした社会的な背景があります」と宗村社長。
『Patch MD』は全部で30種類以上。人気のサプリは美白や風邪防止に効く「ビタミンCプラス」、疲労時の回復におすすめの「B12エナジープラス」、糖尿病リスクや中性脂肪を下げる「オメガ3プラス」、そして、ダイエット効果の高い「ガルシニア・カンボジアプラス」などだが、キッズ用やメンズ用のサプリもある。宗村社長によると、「あらゆる成分の経皮吸収を分析していますから、今後もどんどん新商品が生まれてくると思います」という。
経皮吸収パッチは医療の分野では注射や経口投与に代わる新しい薬物の投与法として関心が寄せられているが、化粧品の分野ではヒアルロン酸やコラーゲンなどの美容成分を効率的に肌表面に届けるマイクロニードルパッチ技術が開発され、すでに多くの商品が発売されている。
さらにこの時期に注目されるのが貼るだけのワクチンという分野だ。大阪大学などではインフルエンザマイクロニードルワクチン(経皮吸収型ワクチン)の実用化プロジェクトも進んでいるようだ、
すべての有効成分が経皮吸収できるわけではないが、ヘルスケア&メディカル分野でのこの種の新しいアプローチがますます増えそうだ。
(文=編集部)
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