沖縄野菜は高血圧や生活習慣病予防に有効?
このような大規模なコホート研究は極めて稀なので、予防効果の確証も難しい。今回の研究と多少研究デザインが違うのだが、高血圧や生活習慣病と沖縄野菜の摂取量の関係を研究したものもある。
琉球大学医学部の等々力英美准教授らが行った「沖縄特産緑黄色野菜による生体内抗酸化栄養素及び酸化ストレスマーカーに与える影響2006〜2007年」を見てみよう。
研究によると、沖縄在住の20~60歳代の女性、夫婦、米国人男女、横浜東京在住40~60歳代夫婦の合計700名を対象に「沖縄野菜を主体とした沖縄型食事介入による無作為割付比較試験」を行った。
その結果、沖縄野菜を豊富に取り入れた“伝統的沖縄型食事”はダイエット法としても知られている“欧米型DASH食”と異なる手法でありながら、高血圧の予防に有効である可能性があり、食事パターンに取り入れることによって生活習慣病の予防や治療の有効な戦略となりうるとしている。
ちなみにDASH食とは、アメリカ合衆国保健福祉省のアメリカ国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所(NHLBI)が、高血圧を予防し治療するために考案し、推奨している食事療法だ。
雑誌『U.S.News & World Report』は毎年、年間ダイエット法ランキングを掲載しているが、2019年版でも1位が地中海式ダイエット、2位がこのDASH食となっている。その中心を占めるのは、全粒穀類、野菜、くだもの、魚、鶏肉、脂肪のない肉、低脂肪・無脂肪乳などである。
伝統的沖縄型食事はDASH食とは手法が違い、沖縄野菜を多く摂取する食事介入であったが、高血圧予防にある程度の効果があったとしている。
食事のバランスこそが最強の健康法
野菜や果物を多種類、十分に摂取することで疾患リスクを下げるというエビデンスは非常に多い。しかし、例えば抗酸化という作用だけではなく、他の栄養素や繊維質などさまざまな要因が関係しているようだ。
特定の食べ物が健康・病気に及ぼす影響をエビデンスに関係なく過大に評価し、声高に主張するような態度は「フードファデイズム」と呼ばれる。この「フードファデイズム」に基づいたTV番組や書籍は後を絶たない。寒天、納豆、バナナなど、メディアで体に良いと紹介される度に、スーパーではその食品が品切れ状態となるが、これさえ食べれば健康にいいというマジックフードなど無いに等しい。
最後にあまりにも当たり前の研究結果を紹介しよう。
国立がん研究センターが男女約7万9600人を、約15年追跡し、「食事バランスガイド」遵守と死亡との関連を調べた結果、食事バランスガイドの遵守度が高い人ほど死亡リスクが低下しており、特に脳血管疾患の死亡リスクとの関連が明らかだった。循環器疾患のリスク低下では、食事バランスガイドの副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)および果物の遵守得点が高い人で顕著に認められた。一方、脳血管疾患死亡のリスク低下は主菜(肉、魚、卵、大豆料理)の食事バランスガイド遵守得点が高い人で顕著だった。
食事バランスガイドとは、2005年に厚生労働省・農林水産省が策定した食事の摂取目安で「何をどれだけ食べたら良いのか」について推奨量が示されている。
この研究結果は当然で退屈でもあるが、基本中の基本といえる。「フードファデイズム」とは決別して、食事バランスを重視することが最強の健康法だ。
(文=編集部)