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タトゥーを入れるとMRI検査を受けられなくなるは本当か?

実際にタトゥーでの熱傷事故は起きている

 さて、タトゥーでの医療事故は本当に起きているのか?

 アメリカでは1997年に、腹部にタトゥーを入れた女性の患者がMRIを実施し、タトゥー部分に火傷を負ったという症例が報告されており、2000年にもタトゥーを入れた患者2名の火傷が報告されている。1人の患者は、鮮やかな色といくつかのループ模様とドラゴンの大きなタトゥー(20×10 cm)を入れていたが、ループ状の模様の部分が最も火傷の度合いがひどくなっていた。
 
 ループの形をしたタトゥーはアンテナのように働き、磁石からより多くのエネルギーを吸収することで、加熱しやすいと思われる。熱傷の酷さは、タトゥーの大きさ、タトゥーで使われている顔料の磁性の度合い、さらにループ模様のようなタトゥーの形状によって決まる傾向があると指摘されている。
 
 2002年には、眉毛やアイライナーといった化粧目的のタトゥーでMRIに関連する合併症および有害事象の発生率を決定する調査が行なわれた。化粧目的のタトゥーを施した後でMRI検査をした135人の患者を特定した結果、2人(1.5%)の有害事象が報告されている。2名の患者は頸椎のMRIを受けており、いずれも目元に青色や黒色など金属含有の可能性が高いインクを使ったタトゥーを入れていた。
 
 しかし、有害事象の内容は、研究が終了した際には治癒しているほどの軽度の<うずき>と <燃える感覚>であったため、それほど重篤ではなく、極めてまれな事故だとも考えられる。

 こうした事故をうけ、タトゥーに使用されるインクは酸化鉄などの金属成分を含むものが減少している傾向にあるといわれるが、アメリカではFDAによって規制されていないため、タトゥーインクにどのような成分、物質が使用されているかを判断するのは難しいのが現状だ。
 
 最近日本では、タトゥーだけでなく薄毛対策で人気のある「スーパーミリオンヘアー」によるMRI機器内での飛散事故が、ネット上で話題になっていた。飛散事故が起こった場合、MRI装置が故障し、数日間使用できなくなるという。病院側が注意を呼びかいけていたようだが、事の真偽は定かではなく、具体的な事故の情報は少ない。
 
「スーパーミリオンヘアー」のメーカー側は、「商品の成分は植物性の繊維で金属は含まれていないため安全」としているが、輸入されている類似品には酸化鉄などの金属成分が使用されている場合もあるので、注意が必要なようだ。

タトゥーがある場合は、検査前に医療機関と相談を

  多くのアメリカの医療機関では、タトゥーによる熱傷事故の可能性について
「It’s rare, and no good reason to skip your MRI, but it can happen」

つまり、「熱傷事故はまれであり、それを理由にMRI検査を受けないのは正しいとはいえない。しかし、熱傷事故は起こり得る」と表示している。
 
 化粧目的のタトゥー含め、すでに体のどこかにタトゥーがある場合、あるいはこれからタトゥーを考えている場合は、自分のタトゥーインクに、金属成分が含まれているのかどうかを調べておくべきだろう。その上で、MRIを受ける場合は、きちんと医療機関でその内容を事前に伝えることが大切だ。正確な情報に基づいて医療機関と話し合えば、過剰な心配は無用だろう。
(文/編集部)

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