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安全な飲酒量はない!?アルコール関連死280万人、がんの死亡リスクが酒量に比例!

一方で週3~4回の適度な飲酒は2型糖尿病の発症リスクが最低に

 このような飲酒がもたらす健康損失リスクへの辛辣な警告の一方、「適度な飲酒ならば、2型糖尿病の発症リスクが最低になる」と指摘する研究がある。

 デンマークのNational Institute of Public Health UniversityのCharlotte Holst氏らは、2007~08年に健康診査を受けた18歳以上の男女7万人のデータを解析し、「週3~4回の飲酒が糖尿病の最低リスクと関連することが示唆された」とする研究成果を『Diabetologia』(2017年7月28日オンライン版)に発表した。

 Holst氏らは、「Danish Health Examination Survey 2007-2008」の健康診査データを活用し、糖尿病歴のない18~98歳(妊婦および過去6カ月以内の経産婦は除外)の7万551人(男性2万8704人、女性4万1847人)を対象に、飲酒パターンに基づく週当たりの平均アルコール摂取量を算出し、2型糖尿病リスクとの関連を解析した。

 その結果、平均4.9年の追跡期間中、男性859例と女性887例が2型糖尿病を発症。ただし、2型糖尿病リスクの最も低い飲酒パターンは、男性は週14ドリンク、女性は週9ドリンクだった。週1回の飲酒と比べると、週3~4回の飲酒による2型糖尿病リスクは、男性が27%、女性が32%減少した。

「障害調整生存年数(DALY)」とは?

 さて、飲酒がもたらす深刻な健康損失リスクもあれば、適度な飲酒ならば2型糖尿病の発症リスクを抑制する効果もある。愛飲家や左党は、痛し痒し有難しというところだろうか。

 なお、先述の研究で頻発していた「障害調整生存年数(DALY:disability-adjusted life year)」を簡単に説明しよう。

 DALYは「早死にすることによって失われた損失生存年数 (YLL:Years of Life Lost) と「障害を有することによって失われた障害生存年数 (YLD:Years Lost due to Disability)」を足した年数。つまり、障害調整生存年数 (DALY) = 損失生存年数 (YLL)+ 障害生存年数 (YLD)だ。

 損失生存年数 (YLL)は「死亡数(N)」と「平均余命(L)」の積。つまり、損失生存年数 (YLL)=「死亡数(N)」×「平均余命(L)」。障害生存年数 (YLD)は「障害の発生数(I)」と「障害の程度によるウエイト付け(DW)」と「状態が安定するか死亡するまでの年数(L)」の積。つまり、障害生存年数 (YLD)=「障害の発生数(I)」×「障害の程度によるウエイト付け(DW)×「状態が安定するか死亡するまでの年数(L)」だ。

 障害調整生存年数(DALY)は、1990年代初めにハーバード大学のクリストファー・マーレー教授らが開発。WHOや世界銀行は、平均寿命と異なり、疾病や障害に対する負担を総合的に評価できる指標として注目している。

 ただ、障害調整生存年数(DALY)は、地域性を除外している、障害をもつ人の発想と違和感がある、社会的価値観や倫理的な問題に抵触するなどの批判もある。
(文=編集部)

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