労働者の「うつ病」は管理職のケアで改善(depositphotos.com)
うつ病に苦しむ従業員が、それを克服するためには、職場の上司の手助けが不可欠なようだ――。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスのSara Evans-Lacko氏らが、欧米やアジア、アフリカなど15カ国の従業員や管理職を対象とした調査データを分析した結果、「管理職の支援があれば、うつ病の従業員が仕事を休む頻度が減る可能性のある」ことが明らかになった。
この研究結果は『BMJ Open』(7月23日オンライン版)に発表された。
管理職によるケア、日本は16%と最低
働き続けていれば、どこかの時点でうつ病を経験することは珍しいことではない。しかし、Evans-Lacko氏は「うつ病患者の多くは周囲からの無理解や偏見などを恐れて、自分の症状を周りに打ち明けたり、助けを求めたりすることはあまりない」と話す。
Evans-Lacko 氏らは今回、管理職の反応や支援がうつ病を抱える従業員の出勤状況に与える影響について検討するため、次のデータを分析した。
米国やカナダ、ブラジル、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、メキシコ、スペイン、南アフリカ、韓国、トルコで、計1万6018人の従業員および管理職を対象に実施された横断調査である。
その結果、調査の対象となった従業員のうち2985人に、うつ病の診断歴があった。うつ病の従業員に対する管理職の対応は、国によって大きなばらつきが見られた。
たとえば、うつ病の従業員を支援した経験があると回答した管理職の割合は、メキシコで67.3%と最も高い。
南アフリカ、スペイン、トルコ、ブラジル、英国、デンマークでも50%を超えていたが、日本は16%と最も低く、次いで韓国でも28.7%とアジア地域で低いことが分かった。
また、管理職が従業員とうつ病について話し合うことを避ける傾向が最も強かったのも、韓国や中国といったアジア地域の国々だった。一方、カナダやデンマーク、英国の管理職は従業員と積極的に話し合う傾向が見られた。