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【シリーズ「本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言!」 第24回】

ドラマ『グッドドクター』 高度な技術と繊細な感性を求められる小児外科医に注目!

我が子の手術に立ち会って大泣した親の自分

 『グッドドクター』の主人公は小児外科医を目指しています。実際、小児外科の医師は人手不足ですので、このドラマで取り上げられて、世間に認知されたら嬉しいな、と思って見ています。

 小児は小さい大人ではありません。小児独特の疾患・特徴などがあり、大人の治療の常識が通用しません。血管確保するだけでも(暴れる以外の意味でも)大変な技術が必要です。臓器のすべてが未熟ですし、身体も小さいので薬の量も体重計算で決定しますし、大人では治らない疾患も小児では完治可能なこともあるのです。

 小児病棟で研修しているときは、常に自分で作成した計算のための「あんちょこ」を持ち歩き、薬の量に間違いがないかとびくびくしていました。開業の医師でも「小児には薬を出したくない」と言い切っている医者もいるくらい繊細なのです。

 症状は自分でうまく告げてくれないのが常ですから、1回の問診ですべてがわかることはなく、時に親と切り離して話を聞いていかないと真実が見えないことも。

 私の場合は整形外科ですので、小児の繰り返す怪我は常に虐待を念頭におき診察していかないといけないので、親の言うことは鵜呑みにはできません。

 大学病院にいた時、3歳のバターチャイルド(虐待を受けた子供)の担当になったことがありました。その子は小さい音にびくびくし、いつも不安気で笑顔は見せない子でした。母は兄弟が飛び乗ったなど、毎回異なる受傷機転を述べ、お見舞いにはほぼ来なかったのを覚えています。とてもショッキングでしたが、今ほど子供に深く思いを馳せてはいなかったかもしれません。

 私も親になり、自然に子供の異変には、すぐに気づくようになり、患者さんへ治療のやり方すら変わってきました。

 でも、小児を診る医者や看護師は常に、子供のわずかな異変も早めにキャッチしようと頑張ってくれています。医療のスキルばかりでなく、親も含めた人間関係における感性も必要とされるのが、小児を診る医師でしょう。小児病棟の場合は親も泊まり込む場合もあるので、医師も看護師も親の不安を取り除く必要もあるのです。

 私の長男も1歳半の時に小児外科にお世話になったことがありました。大好きな同級生とそのオーベン(指導医)にオペをしてもらったのですが、多くのものを言えない我が子がオペ室に運ばれていく時には、大号泣をしてしまいました。

 オペが終わり、痛みのせいでわずかに動くことさえできずにいる我が子をどうすることもできず、ただただ手を握っていました。同級生はそんな私を見て大笑いでしたが……。

 命に関わる疾患ではないとはわかっていても、親ってどうしようもないわね、と自己嫌悪。そんな親の面倒も見るのですから、小児の医者も大変です!

 ドラマ『グッドドクター』も折り返しでしょうか。毎回、劇中も、完結するストーリーも、組み込まれており、湊のピュアな心に触れて、周りの大人が大切なものを取り戻していく内容には思わず涙……(笑)。

 ここから湊の違うストーリーが始まります。湊の優れた能力をもっと見せてほしいな、と個人的には思っています。
(文=井上留美子)


ドラマ『グッドドクター』 高度な技術と繊細な感性を求められる小児外科医に注目!の画像2

井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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