健康的な生活習慣でも職業性ストレスが及ぼす悪影響
しかも、こうした死亡リスクの増大は、健康的な生活習慣を守っている男性や、血圧や脂質を治療で管理できている男性でも認められた。
一方で、心血管代謝疾患をもつ男性において、「努力と報酬が不釣り合いなストレス」と死亡リスクとの間には関連は見られなかった。
さらに女性では、心血管代謝疾患の有無にかかわらず、どちらのタイプのストレスでも死亡リスクの有意な上昇は見られなかった。この結果について、Kivimäki氏は「働く年齢層の男女では、男性のほうが動脈硬化が多く見られることと一致する」と指摘している。
ストレスの影響を過大評価している可能性も?
Kivimäki氏によると、精神的なストレスは心機能や血液の凝固、(動脈硬化性)プラークの形成などさまざまな面に悪影響を及ぼす。
また、ストレスを受けるとストレスホルモンとして知られるコルチゾールの血中濃度が上昇して血糖値が上がるほか、炎症が亢進して血圧が上昇する可能性もあるという。
ただし、この研究は、これらの因果関係を証明したものではないことに注意が必要だ。
ストレスの評価は研究開始時点のもので、疾患の重症度の経時的な変化も考慮されていないことなどから、Kivimäki氏らは「ストレスの影響を過大評価している可能性がある」としている。
とはいえ、米レノックス・ヒル病院のSatjit Bhusri氏は専門家の立場から、「仕事のストレスの軽減は心臓の健康に寄与すると考えられる。ストレスの軽減には瞑想やヨガ、運動が勧められるが、抱えている仕事を一度見直すことも必要かもしれない」とコメントしている。
(文=編集部)