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VAR判定がサッカーの主役に? ワールドカップ・ロシア大会で課題が山積

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VTR導入でファウル判定が増加(depositphotos.com)

 かりにワールドカップ(W杯)を映画に喩えるならば、今ロシア大会の助演男優賞は間違いなく、略称VARこと「ビデオ・アシスタント・レフェリー」がその栄冠に輝くだろう。

 話題のVARは、得点シーンやレッドカード(一発退場処分)などの誤審削減を狙ったビデオ判定システム。

 W杯での導入は今回からだが、その効果は絶大で、グループB最終戦のポルトガル対イラン(現地時間6月25日)における2回のビデオ判定で早くも大会通算PK数「20」をカウントし、歴代最多を更新してしまった。

また、同試合を含め、90分間で2本以上のPKが与えられた例が今大会だけでも計4度あるのもVAR効果の証左だろう。導入反対派の代表的意見としては「試合の流れを損ねる」との見方がある。

 だが、主審協会の見解によれば、「審判団は従来もビデオ判定なしで95%のファウルを判定してきたが、今大会のVTR導入でその数字が99.3%に伸びた」という。

 VTRは、主審の判定が「誤り」と判断された場合、映像副審が誤審を申告できる制度。主審自身も自ら映像を見直して再判定ができる(=手で画面の四角を表わすポーズがそれの意味)。

W杯の名脇役、VARも課題あり

 が、チュニジアとの初戦(同6月18日)においてイングランドのFWハリー・ケインが2度も激しく地面に倒されながら、お咎めなしだった点を「VTRスタジオ内のブラジル人審判が関与しないのに失望を覚えた」と、著名な国際審判OBが苦言を呈した。

 彼の主張は、「審判とVTR要員の両方とが話すべき」という課題への改善案だ。

 あるいは誤審激減の一方、ビデオ映像上でも審判への悪罵発言が確認できるポルトガル代表FWのC.ロナウドの猛抗議シーンでも、主審の判定はイエローカードのみ。これを確認した国際主審OBからは「FIFA(国際サッカー連盟)は自らの権威を示す大きな機会を逃した…」と不満を表明した。

 世界のスーパースター(の圧倒的存在感)に対する判定時はさすがのVARも出る幕なしというわけか――それは言い過ぎにしても、話題のVAR判定に関して、たいへん気になる論文を掲載しているのが、『Cognitive Research: Principles and Implicantions』(6月11日オンライ版)だ。

 なんでもルーヴェン・カトリック大学(=奇しくも日本代表が惜敗したベルギー国内の大学)のJochim Spitz氏らの研究報告によれば、ビデオ判定映像の「再生速度」に応じて、審判の「ファウル判定」が変わる可能性が示唆されたというではないか。

 Spitz氏らの研究に際しては、5カ国のベテラン審判88人の被験協力を仰いだ。その全員に、国際試合においてファウルと判定された60例の場面映像を鑑賞してもらい、各自の再判定結果を問うた。

再判定の素材については、全員に①通常速度による再生映像/②スロー再生の映像との両方を観てもらい、再生速度が判定に及ぼす影響の違いを検証した。

結果、選手の行為を②のスロー再生映像で判定した場合、審判陣は総じて「より厳しいペナルティーを科す傾向にある」共通点が読み取れた。もっとも、ファウルかどうかの判定精度自体においては、①の通常速度時で61%、②で63%程度の僅差と有意な差は認められなかった。

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