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【シリーズ「子どもには絶対に使ってはいけない生活用品」36回】

EUで大論議を巻き起こしているリン酸塩の危険性を検証する!

EUで大論議を巻き起こしている「リン酸塩」の危険性を検証する!の画像1

欧州議会は冷凍肉への「リン酸塩の使用を認める」という採決(depositphotos.com)

 昨年(2017年)12月、欧州議会は、ドネルケバブ用(欧州で人気のファストフード。通称「ケバブ」)冷凍肉への「リン酸塩の使用を認める」という採決をしました。

 かねてから、EU加盟国の環境擁護派は、「リン酸塩は心臓疾患の発症リスクを高めたり骨に打撃を与える可能性がある」として、「ケバブ」への使用禁止を訴えていました。

 一方、欧州議会で最大会派の中道右派政党・欧州人民党(EPP)は、「ケバブへのリン酸塩の使用を禁止すれば、ドイツを中心に全欧規模で20万人の失業につながる可能性があるだろう」と、使用禁止には断固反対と主張していました。

 こうした中、欧州人民党の影響力の強い欧州委員会は、ケバブ用冷凍肉へのリン酸塩使用を認めるよう、欧州議会に提案。提案を阻止するのには、欧州議会の「絶対過半数議席の376票」が必要ですが、「提案阻止に投じられた票は373票」で、絶対過半数まで僅か3票とどきませんでした。

 この結果、欧州委員会の提案が通り、リン酸塩の「ケバブ」使用は容認されることになりました。

 しかし、EUの専門機関である欧州食品安全機関(EFSA)は、「2018年12月末までにリン酸塩の安全性を再評価する」としています。再評価次第では、全加工食品へのリン酸塩添加が禁止される可能性もあります。そうなれば、当然、「ケバブ」への使用も禁止ということになるはずです。

「リン酸塩」とは、どのような添加物か?

 それにしても、欧州議会の半数の議員が使用に反対しているリン酸塩という添加物は、どんな添加物なのでしょうか? 日本でもリン酸塩は、ハムやソーセージ、カレールー、インスタント麺、練り製品、スナック菓子、調味料、清涼飲料など多くの加工食品に添加されています。

 まず、リン酸塩の用途を整理してみました(参照『食品添加物読本』郡司篤孝:著)。

 リン酸塩には、肉のたんぱく質の水和性を増す効果が大きく、食肉、魚肉、練り製品の足を強くする(水分を保つ)働きがあります。そのこから、結着剤その他として、広い範囲でリン酸塩の配合製剤が食品に利用されています。具体的には、食肉、魚肉、味噌、醤油、果実、清涼飲料、冷凍食品、チーズが多く、それぞれ「○○用製剤」として販売されています。

 リン酸塩には、縮合リン酸塩(重合リン酸塩)と呼ばれるものがあります。ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩で、単独で使うことはなく、他のリン酸塩と一緒に使うことから、縮合リン酸塩と呼ばれます。

郡司和夫(ぐんじ・かずお)

フリージャーナリスト。1949年、東京都生れ。法政大学卒。食品汚染、環境問題の一線に立ち、雑誌の特集記事を中心に執筆活動を行っている。主な著書に『「赤ちゃん」が危ない』(情報センター出版局)、『食品のカラクリ』(宝島社)、『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)、『シックハウス症候群』(東洋経済新報社)、『体をこわす添加物から身を守る本』(三笠書房・知的生き方文庫)など多数。

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