米国小児学会は乳児にジュースを与えないことを推奨(depositphotos.com)
スーパーやドラッグストアでは、「5カ月から」「1歳から」など表示された乳児・幼児用のジュースがよく売られていますね。そういうのを見ていると、「5カ月になったら、1歳になったら、飲ませたほうがいいのかな?」とつい思ってしまいますが、全然そんなことはありません!
確かに2007年度までは、母子手帳の保護者の記録の生後3~4カ月の欄にも「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という記述がありました。そのため、古い育児書の中には、お風呂上がりに果汁を飲ませるのを勧めているものもあります。しかし、それはもう過去の話です。
フルーツジュースの飲み過ぎで成長障害に
実は、アメリカ小児学会は現在、1歳までの乳児にジュースを与えることを勧めないと明言しています(1)。 これは、果汁100%のジュースであっても同じです。
ジュースは、果物そのものに含まれている繊維質が取り除かれてしまっていて、果物よりも急激に糖分が吸収されてしまうという特徴があります。ジュースは虫歯の原因になるほか、栄養過多や、逆に栄養不足を引き起こす場合もあるというのです。
1997年には、1歳半から4歳半まで、1675人のイギリスの子どもの栄養調査を解析した論文が発表されました。砂糖やはちみつ、フルーツジュースの摂取量が多い子どもは、鉄や亜鉛、ビタミンDが不足する傾向にあり、特にエネルギーの24%以上をそうした糖分から摂取している子どもたちは、鉄と亜鉛が必要量を下回っていることがわかりました(2)。
鉄分不足は貧血を引き起こし、神経系の発達にも影響します。亜鉛も免疫システムや傷の治りに関係する重要な栄養素ですが、いずれも乳幼児で不足しやすい栄養素です。お菓子やジュースの摂取量が多い子は、牛乳や肉、パン、野菜の摂取量が少なくなっており、それが原因で鉄・亜鉛不足になっていたと考えられています。
また、1994年には、アメリカの研究者が、フルーツジュースの飲み過ぎで成長障害を引き起こした、1~2歳の子ども8人の症例を報告しています(3)。最も量が多かった子は、1日に850mlものジュースを飲んでいたそうです。成長障害の原因は、タンパク質や脂肪、その他の栄養素の摂取不足になっていたことで、食事を改善することで体重も増えるようになりました。