「週3回入場」の制限は無意味!?
次の診断項目のうち、4つかそれ以上が該当すれば、ギャンブル障害だと診断される。
①興奮を得たいために掛け金の額を増やして賭博をする要求。
②賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、または苛立つ。
③賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある。
④しばしば賭博に心を奪われている。
⑤苦痛の気分のときに賭博をすることが多い。
⑥賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い。
⑦賭博へののめり込みを隠すために嘘をつく。
⑧賭博のために、重要な人間関係・仕事・教育・職業上の機会を危険にさらしたり、失ったことがある。
⑨賭博によって引き起こされた絶望的な経済状況を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む。
このうち、6番目の「賭博で金をすった後、別の日に取り戻しに帰って来る」について考えれば、「週のうち3回入場できる」という制限は、十分にそれを可能にできるだけの、意味の希薄な制限であることがわかるだろう。
そもそも日本は、あらゆる街に「パチンコ店」というギャンブル施設がある、世界でも珍しい国である。カジノによって喚起されたギャンブルへの欲求を紛らわすために、カジノに行けない日はパチンコ屋に行くようになることだって十分に考えられる。
ギャンブル依存の日本人は320万人
厚生労働省が2017年にギャンブル依存症の実態を把握するために実施した調査によれば、日本人が生涯でギャンブル依存症の疑いがある状態になったことのある人は3.6%。これを日本の人口にあてはめると、約320万人がギャンブル依存症の疑いがある計算になる。3.6%というのは、諸外国と比べても格段に高い数字だ。
政府は「カジノを含む統合型リゾートは、海外の訪問客を呼び込むための施設だ」としている。しかし、日本人も入場できる以上、ギャンブル依存の日本人にとっていい結果を生まないのは明らか。
お洒落なイメージのカジノを、物珍しさから一度体験しようと入場して、ギャンブル依存症の泥沼にはまる人が大勢出る可能性は極めて高いのだ。
現在、カジノを含む「統合型リゾート」の誘致に対しては、次の都市が意欲を示している。
北海道の新千歳空港近郊(千歳市)、同じく北海道のルスツリゾート(虻田郡留寿都村)と阿寒湖温泉地区(釧路市)、和歌山県の和歌山マリーナシティ(和歌山市)、大阪湾の人口島である夢洲(大阪府大阪市此花区)、長崎県のハウステンボス(佐世保市)などである。
だが、これらの観光地の周辺にも多くの地域住民が住んでいることは言うまでもない。目先の経済効果に目を奪われて、住民の人生を台無しにすることがないよう、これらの自治体の議員や関係者は、いま一度再考するべきではなかろうか。
(文=編集部)