戦後から始まった孤児にとっての「戦争」
ラスト場面で兄の清太は、餓死寸前の「駅の子」として描かれる。彼と同じく空襲で親を亡くした者、疎開先からの帰京時に迎えが来ず浮浪児になった者、農家の養子に迎えられつつ重労働に耐えかねて家出してきた者……。
彼ら戦争孤児たちにとっての戦争は「戦後(敗戦)と同時に始まった」ともいわれる。敗戦翌年(1946年)の帝国議会の答弁では、その数「3000名前後」とされたが、2年後に行なわれた厚生省の全国一斉調査では「12万人以上」の戦争孤児の存在が判明した(ただし沖縄や路上生活組は含まず)。
飽食時代の日本で「新型栄養失調」?
一方、2019年5月をもってて「平成」が終わる昨今のニッポンで、よく耳にするようになったのが「新型栄養失調」という言葉だ。カロリー信仰による誤った食生活、栄養バランスの偏りなど、食べものの摂り方に問題ある老若男女を問わず増えているという。
昨年11月、「働く女性の栄養状態」について特集したNHKの番組内で、彼女たちは摂取している栄養が「1日平均1479キロカロリー」という数字が公表された。医師や栄養士などで作る団体の調査結果だった。
ちなみに厚生労働省が謳う1日に必要なエネルギーは20/30代の働く女性で2000キロカロリーである。
戸惑い顔の桑子真帆アナがそれを受けて、こう言った。「この1479キロカロリーという数字、食料難だった敗戦直後よりも栄養飢餓状態、なんだそうです……」。
まさか高畑作品の『火垂るの墓』がそんな未来(=今日)を示唆していたわけではなかろうが、故人を偲んで2歳年下の大林宜彦監督が語った追悼談話がなんとも印象的だ。
「高畑さんの作品は決して見て楽しいだけのアニメーションではなかった。つらいけどつらさを乗り越えていくことを教えてくれた。(監督は)映画で平和をつくる意思が明快だった」(スポーツニッポン:2018年4月7日)
これまで観る機会を逃してきた方々にこそお薦めしたい。
(文=編集部)