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親なき後に精神障害者を支える仕組み~『リリー賞』自立支援の取り組み 

親なき後を悲惨なものにしないためには……

 

 「親なき後」への対策として、特に財産がある場合には「適切な保全のための対応が必要」だと、今回、登壇した藤井悌一氏は訴える。

 一方、親が生前のうちは、日常生活のあらゆる面において親が面倒を見ていたケースでも、親が亡くなった後は、自分で炊事や掃除、洗濯をするようになり、生活能力が上がって、元気にもなるケースも少なくないという。

 親なき後を悲惨なものにしないためには、親の生前から一人暮らしをさせるなどして、親がいなくても生活できる自信をつけさせていくことも大事である。

リリー賞を受賞した当事者たちとは?

 さて、今回、リリー賞の当事者部門を受賞したのは2人――。

 塚本正治さん(56歳)は、26歳のときにうつ病を発症。現在は精神障害者地域生活支援センターの常勤職員として働きながら、シンガーソングライターとして10枚のCDをリリースしている。

 曽根博さん(74歳)は、16歳で統合失調症を発症し、33歳までに19回もの入退院を繰り返した。その後は同じく統合失調症を患う姉を支えながら、患者家族会の運営、NPO法人の立ち上げ、就労継続支援B型事業所の開設など、地域の精神保健福祉を向上させる活動を続けてきた。

 特定非営利活動法人「ときわ」の藤井理事長は「心の病を持つ人が生きていくためには『社会の役に立っている』と実感することが必要だ」と話す。

 例年の当事者部門の受賞者たちは、病気の状態もよくなり積極的に社会活動を行なう、いわば「スーパー当事者」たちである。いまだ症状が重く、他人のための活動どころではない人たちにとっては、いささか眩しすぎる存在かもしれない。

 それでも受賞者たちは、精神的な病気を持ちながらも、人間はそこから復活し、リカバリーして社会に貢献できるようになるということを証明している。

 現在、苦しい思いをしている患者にとっても、自らの亡き後を心配する親にとっても、大きな希望であるのは間違いない。病気の重さに苦しんでいる人にこそ、ぜひ目標としてほしい存在である。
(取材・文=里中高志)

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