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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第61回】

「科捜研の女」放送200回 科学捜査に信念とプライドを燃やす沢口靖子の怪演

犯罪心理、文書分野、物理学分野、科学分野、研究開発分野とは?

 この法医学分野とともに、犯罪心理の研究、ポリグラフによる虚偽検出業務を携わる心理学分野も重要だ。生理心理学から認知心理学・社会心理学・犯罪心理学・犯罪精神医学・犯罪社会学までの深い学識、人格的な素養、豊かな経験が求められる。

 「科捜研の女」で、正義感が強く、情にもろい日野和正所長(斉藤暁)が意欲的に取り組んでいるのが文書(人文)分野。

 筆跡・印章・印字印刷物・不明文字・通貨などの鑑定業務と研究、詐欺・贈賄・文書偽造などの鑑定が主体だ。裁判で証拠物件の検証のために鑑定人の席に着き、証言することも少なくない。

 材料力学・流体工学・熱工学・システム解析学・情報工学・計算工学・電気工学に長けた橋口呂太(渡部秀)が一手に引き受けているのが物理学(工学)分野。

 火災・交通事故・発砲事件の再現実験や調査を皮切りに、車両・構造物・機械・銃器・弾丸・音声・音響などや電子機器などの検査鑑定のほか、サイバー犯罪に使用されたコンピューターの解析も行う。複雑化・混迷化した都市犯罪の解明に欠かせない高度な鑑定ノウハウだ。

 化学分野は、分析化学・無機化学・高分子化学・有機化学・放射化学のケミカル領域のパイオニア、宇佐見裕也(風間トオル)の独壇場だろう。

 覚せい剤・麻薬・シンナー・大麻などの依存性薬物の解析をはじめ、中毒死事件の毒物・薬物、放火事件の油類の分析、不法投棄された廃棄物や産業排水・繊維・塗料・樹脂・金属などの化学的鑑定、油類・火薬類・金属類の分析検査、薬類・爆発物・高圧ガス・放射性物質などの危険物の鑑定まで手広くこなさなければならない。

 化学工場の爆発事故が起これば現場に急行して原因を究明したり、兵庫県にあるSPring-8(大型放射光施設)に詰めて、微量成分の解析に缶詰めになることもある。

 航空テロや空港テロに備えた爆発物や化学兵器の防犯・研究に関わる国立航空科学研究所の技官のキャリアを存分に活かす宇佐見。気象や海洋などの航空安全に関わる知識も豊富。マリコの頼れるアドバイザーだ。

 この他、研究開発分野も中核業務だろう。

 犯罪の手口の巧妙化に伴い、鑑定精度の向上・簡略化・迅速性・冤罪防止のニーズが高まっている。

 研究開発分野は、最新の機器を導入し、技術向上に努めつつ、研究員が大学院に入学して博士の学位を取得したり、大学や学術学会と連携して専門に特化した研究開発を行わなければならない。博士学位取得者(医学・薬学・理学・工学・文学)は全国に約80人いる。

 このように科捜研のマリコらの研究員は、365日休むことなく、研究や鑑定業務に勤しんでいるのだ。
そのミッションはただ一つ。マリコのクレド「科学は嘘をつかない!」。そして「ホシを上げろ!」だ。
(文=佐藤博)

※参考
テレビ朝日
http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken17/
http://www.tv-asahi.co.jp/kasouken17/news/0011/

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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