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羽生結弦66年ぶりの五輪連覇!持病の喘息、脳しんとう、そして靱帯損傷……苦難の道を振り返る

2歳の頃から苦しんだ喘息の克服に専念

 先述の通り、羽生選手は、2歳の頃から喘息(気管支喘息)に苦しんできた。小走りだけで咳き込む。夜も咳が切れず、眠れない日々との闘いだった。見かねた両親は、持病を乗り越えさせようと、羽生が4歳の頃にスケート靴を買い与える(参考:週刊現代オンライン版2015.01.30「天才・羽生結弦を育てた「羽生家の家訓」)。

 喘息は、空気の通り道である気道に炎症が起き、気道が狭くなるため、呼吸が苦しくなる疾患だ。激しい咳や痰、呼吸するとヒューヒュー、ゼーゼーと鳴る音、息切れ、呼吸困難を伴う。

 日本呼吸器学会によれば、喘息患者は、子供の8~14%(小児喘息)、大人の9~10%(成人喘息)。小児喘息は2~3歳までに60~70%が、6歳までに80%以上が発症する。その60~80%が、思春期までに症状が消える。成人喘息は、60%以上が40~60歳代に起こる。

 原因は、小児喘息の70~90%がハウスダスト、ダニ、花粉などのアレルゲンだが、成人喘息は、アレルゲンが特定しにくく慢性化しやすい。特に男性は喘息死のリスクも高いので侮れない。

 治療は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬、喘息発作を和らげる吸入β2刺激薬などが処方される。喘息の発作は苦しいが、適切な治療と体調管理、本人の不断の努力があれば改善に向かい、克服の道は開ける。

 羽生選手も、吸入薬治療、鍼治療、気道を開く施術、移動時や練習時にマスクを着用するなどを励行し、ハンディを少しずつ乗り越えてきた。

次なる大目標は4アクセルの完成! 2022年北京五輪3連覇の夢も?

 脳しんとう、尿膜管遺残症、リスフラン関節靭帯損傷などの度重なるケガや喘息を乗り越えつつ、故郷の仙台を襲った東日本大震災の試練も克服してきた羽生選手――。

 決して驕らない謙虚さと素直さ。逆境に立ち向かい、目標を諦めない強かな精神力。羽生選手が秘める底力は、どこから湧いてくるのだろう?

 今年3月にミラノ世界選手権が迫っている。今は痛み止めを飲まなければ、ジャンプを跳べる状態ではない。平昌五輪のメダリスト会見で、羽生選手は「モチベーションはすべて4アクセルだけ。あとは小さかったころに思い描いていた自分の目標、夢じゃなくて目標をかなえてあげるだけかなと思っています」と語っている。

 次なるターゲットは4アクセル(4回転半ジャンプ)の完成だ。氷上のプリンス、スピンの貴公子、羽生結弦。弓の弦を結ぶように凛とした生き方を選んだ天才スケータの決意だ。その若き満身の魂から矢は放たれた。2022年北京冬季五輪3連覇に向かって。
(文=編集部)

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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