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【特集「「時計遺伝子」って何?」第3回】

「冬の第1月曜の朝」は心臓病が最も起こりやすい!その理由とは

時計遺伝子の異常を調べ将来の病気を予測

 現代人は夜遅くまで活動したり、ジェット機で短時間に長距離を移動したりと、本来の自然なリズムとはかけ離れた生活を送っている。こうした生活が体内時計を狂わせ、病気を引き起こす要因となってしまうのは、文明の弊害とも言えるだろう。

 しかし、その対策さえも可能になっていくかもしれない。

 「もちろん、規則正しい生活を送るに越したことはないのですが、生活リズムが不規則でも体内時計が狂いにくい人もいます。時計遺伝子には、遺伝子多型(遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差)が多くあり、その違いが影響していると考えられます」(大塚医師)

 たとえば、一般に睡眠時間は6〜8時間が適切とされるが、短時間睡眠でも平気なショートスリーパーには「Dec2」という時計遺伝子の多型があることが発見されている。

 時計遺伝子の違いによって、必要な睡眠時間が変わるのだ。また、「Per3」という時計遺伝子の多型があると睡眠障害になりやすく、白血病など血液のがんの発症率が高くなるとの報告もある。

 こうした時計遺伝子と病気の関わりについては、次々に新たな知見が報告されている。大塚医師は、最後に次のように締めくくった。

 「健診や人間ドックで時計遺伝子の検査をできるようになれば、将来、どんな病気が起りやすいかといった予測も可能になると考えています」

 「仮に時計遺伝子の多型があり、体内時計が乱れやすい人がいたら『夜勤やシフトワークは止めたほうがいい』と助言できるわけです。こうした検査を確立し、将来の病気の予測と予防に役立てたいというのが、私の目標です」
(取材・文=山本太郎/ライター)

大塚邦明(おおつか・くにあき)
東京女子医大名誉教授。九州大学医学部卒業。九州大学温泉治療学研究所、高知医科大学老年病学教室勤務を経て、東京女子医科大学東医療センター総合内科教授、同大学東医療センター病院長を歴任。同大学名誉教授。2015年より戸塚ロイヤルクリニック院長に就任。専門は循環器内科学、高齢者内科学、睡眠医学、時間医学。日本自律神経学会会長、日本時間生物学会会長、日本循環器心身医学会会長、世界時間生物学会会長などの要職を歴任。『時間医学とこころの時計』(清流出版)、『眠りと体内時計を科学する』(春秋社)など著書多数。

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