高血糖やホルモン低下が<細胞のがん化>に……
そもそも糖尿病や肥満が、なぜ「がん発症」に影響するのだろうか?
糖尿病ががん発症の危険性を高めるメカニズムとしては、「高インスリン血症」がある。インスリンは細胞を成長させ増殖させるホルモンであるため、増え過ぎると細胞のがん化に繋がると考えられている。また、高血糖自体による慢性の炎症が、がんを引き起こしているという説もある。
肥満・過体重については、特に内臓肥満によって「アディポネクチン」という糖尿病や動脈硬化を抑制する善玉ホルモンが低下することが、がん化の一因と推測されている。
日本でも日本糖尿病学会と日本癌学会による調査で、糖尿病患者では全がんの発症リスクが1.2倍(男性1.19倍、女性1.19倍)に上昇することが明らかになっている。がんの種類別にみると、発症リスクは膵臓がんで 1.85倍、肝臓がん 1.97倍、大腸がん は1.40倍に上昇するという。
閉経後3年間で5%減量すれば「乳がん」リスクが12%減る
一方、閉経後の女性が3年間で5%ほど減量するだけで、「乳がんのリスクが12%減る可能性がある」という新しい研究結果が、米サンアントニオ乳癌シンポジウム(2017年12月5~9日)で発表された。
米シティ・オブ・ホープ病院のRowan Chlebowski氏らは今回、閉経後女性6万1335人を対象に、研究開始時と3年後に体重を測定して追跡調査した。研究参加当時(1993~1998年)の女性の年齢は50~79歳で乳がんの既往歴がなく、マンモグラフィー検査の結果も正常であった。
平均11.4年の追跡期間中に3061人が浸潤性乳がんを発症。解析の結果、追跡期間中の体重に変化がみられなかった女性(約4万1100人)と比べて、5%以上減量した女性(約8100人)では乳がんの発症リスクが12%低下した。また、15%以上減量した女性では、乳がんリスクは37%低下することも分かった。
これまで肥満が乳がんのリスク因子である可能性は示されていても、実際に減量がリスク低減につながるのか否かは、明らかにされていなかった。
Chlebowski氏は「適正体重にならなくても、わずかな減量で乳がんリスクの低減効果が得られるとする今回の結果は、多くの女性にとって励みになるだろう。5%程度の減量であれば取り組みやすく、体重も維持しやすい」と述べた。
多くの人にとって、肥満と血糖値というリスク因子は自分の意志でコントロールできるもの。食事や運動などの生活スタイルを見直し、生涯にわたって適正体重を維持することの大切さを、もっと広く伝えていくことが必要になるだろう。
(文=編集部)