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【シリーズ「中村祐輔のシカゴ便り」第18回】

子宮頸がんワクチン報道でわかる<メディアの愚> 欠如する「公共の福祉」の観点

日本は前向きの解決策を提案できないおかしな国

 しかし、私は一部の研究者が指摘するような、被害者が訴えている痛みをこのワクチンと関係ないと認める立場には立たない。他のワクチンでも同様な症状があるとか、ワクチン非接種者でも同様の痛みがあるとかを指摘してみたところで、問題の解決にはならない。今、痛みで苦しんでおられる方々の心を傷つけるだけであり、本当の解決には、科学的な解析と痛みからの解放が不可欠だ。

 免疫反応が関係しているなら、ワクチン接種前後で、どのような免疫状態の変化が起こっているのか、科学的に調べれば何らかのヒントが得られるはずだと思っている。すでに痛みを訴えている方たちにも、協力していただくことも不可欠だ。なぜ、前向きな解決策が提案できないのか、おかしな国だ。

第4の権力メディアが、この国を破綻に導く

 そして、日本がこのような非科学的な厚生行政の国になってしまった最大の要因ひとつを挙げるとすれば何か?答えは明白だ。「メディアの愚」なのだ。

 報道によって、風疹ワクチンを中止に追い込みながら、風疹が流行して新生児に影響が出ると、厚生行政を平気で批判する。臓器移植に関する、ジキルとハイドの顔についても以前にも指摘したとおりだ。子宮頸がんによる死亡数が、日本だけ減少しなければ、また、10―20年後に平然と厚生労働省を批判するのだろう。他人には反省を求めるが自分は反省しない、これを恥ともしないうらやましい性格だ。私など、日々反省の繰り返しだ。

 起こった事象を伝えているだけだと弁解するのだろうが、感情的な議論に乗って読み手の好奇心をかき立てるような報道をするだけでは、社会の木鐸としての価値はゼロだ。全体を把握た上で、国としてどうあるべきなのか、国民にとって何がベストなのか、利益を最大にして不利益を最小限にするために何をすべきなのか、建設的な意見を述べる能力がないのだろうか。

 そして、北朝鮮のミサイルが日本上空を通過した。昼行灯のような思考能力のない一部のメディアは、これでも目を覚まさないかもしれない。日本の領土と日本国民をどのように守るのだ。個人的に嫌いだからといって、政権打倒に執着する場合か!憲法9条があっても、国を守れないのだ!近くにやくざの脅威が迫っていても、刑法があるので、警察は不要だと言っているのと同じなのだ。それとも、彼らは北朝鮮に土下座してお願いしろというのか!

 第4の権力と称されるメディアだが、この国を破綻に導く第1の権力となっているような気がしてならない。

『中村祐輔のシカゴ便り』(http://yusukenakamura.hatenablog.com/)2017/0829より転載

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中村祐輔(なかむら・ゆうすけ)

がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長。1977年、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院外科ならびに関連施設での外科勤務を経て、84〜89年、ユタ大学ハワードヒューズ研究所研究員、医学部人類遺伝学教室助教授。89〜94年、(財)癌研究会癌研究所生化学部長。94年、東京大学医科学研究所分子病態研究施設教授。95〜2011年、同研究所ヒトゲノム解析センター長。2005〜2010年、理化学研究所ゲノム医科学研究センター長(併任)。2011年、内閣官房参与内閣官房医療イノベーション推進室長、2012年4月〜2018年6月、シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長を経て、2016年10月20より現職。2018年4月 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)プログラムディレクターも務める。

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