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がんサバイバーのがん体験<再生の物語>~「生きる力」に飛躍させた作品たち

がんの苦しみをエネルギーへと転化させた<再生の物語>

 それぞれの作品は、作者の手になるエッセイとともに発表されている。その作品とエッセイを読んで伝わってくるのは、がんという極めて困難な体験に苦しみながら、最後にはその体験をむしろ人生をさらに飛躍させるエネルギーへと転化させた、力強い再生の物語だ。

がんサバイバーのがん体験を「生きる力」に変えた作品たちの画像2

絵画部門で最優秀賞を受賞した梅田美智子さんの「美しく生きる」

 絵画部門で最優秀賞を受賞した梅田美智子さん(広島県・61歳)の作品タイトルは「美しく生きる」。

 純白の羽を広げる孔雀の絵は、作品に添えられたエッセイによると、転移を繰り返し、絶望の淵に立っているような辛さすらある闘病生活の中で、「この鳥のように美しく生きて行こう。 凛として静かにそしてたくましく」という思いをこめて描かれたものだという。

 授賞式で梅田さんは「がんになっても前向きに生きる、そして娘たちにもまっすぐ前を見て生きていってほしいという気持ちで孔雀の羽を一本一本心を込めて描きました」との言葉を語った。

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写真部門の最優秀賞を受賞した砂原涼志さんの「その先に」

 写真部門の最優秀賞の砂原涼志さん(大阪府・28歳)の作品タイトルは「その先に」。

 血液のがんが見つかったときまだ19歳だった砂原さんは、そのときもう「自分に未来はないのかな」という気持ちに襲われたが、完治して職場の先輩と付き合うようになり、プロポーズも受け入れてもらえた。

 海を見つめる後ろ姿の女性を写したその写真には、「あの時頑張ったからこの先の未来がある」という気持ちが込められている。砂原さんは「このような写真が撮れたのもこれからも頑張って生き続けようと思わせてくれた奥さんのおかげです」と感謝を語った。

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絵手紙部門の最優秀賞を受賞した塩田陽子さんの「ウインクしている わたしのおっぱい」

 そして、絵手紙部門の最優秀賞を受賞したのは、塩田陽子さん(福島県・52歳)の「ウインクしている わたしのおっぱい」。

 青空の下に干しているTシャツの上にウインクしている女性の顔が描かれているその作品には、「先に神様のもとに行った左のおっぱい」の手術の傷跡が、「ウインクしているんだ! と思うと、愛嬌があって愛しく思えてくる」という発想の転換が表されている。

 いつの日か、「あなたがいなくても、私は生き抜いたよ」と左のおっぱいに報告したいと語る彼女の生きる姿勢は、まさにがんという体験を生きる力として生まれ変わらせたサバイバーの力強さに満ちている。

 今回の受賞作品は、今後全国の医療機関や疾患啓発イベントなどで展示される予定とのこと。がんと闘い、がんと共に生きながら、明日を目指そうとする人たちに、大きな希望を与える契機になるに違いない。
(取材・文=里中高志)

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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