これからの主流は張るだけのインフル予防?(depositphotos.com)
米ジョージア工科大学などの硏究グループは、第1相臨床試験の段階にあるインフルエンザワクチンパッチの安全性と有効性を確認したとする予備的研究の成果を『The Lancet』6月27日オンライン版に発表した。
発表によれば、パッチは絆創膏ほどのサイズ。パッチには皮膚を貫通する程度の長さの極めて微小な針(マイクロニードル)が100本付いており、皮膚に貼り付けるだけで、針は皮膚内で溶解するので、安全という。
研究グループは、米エモリー大学で登録された18~49歳の男女100人を次の4群にランダムに振り分けて効果を分析した。
①医療従事者がマイクロニードルパッチを貼って不活化インフルエンザワクチンを接種する群、②医療従事者が筋肉注射により不活化インフルエンザワクチンを接種する群、③医療従事者がパッチを貼ってプラセボを接種する群、④被験者自身がパッチを貼って不活化インフルエンザワクチンを接種する群。
その結果、パッチ群は、筋肉注射群と同程度の免疫応答が誘導される効果が見られた。この効果は被験者が自分でパッチを貼った場合も認められた。
一方、重篤な副作用はなく、発赤や軽度のかゆみなどの局所的な皮膚反応も2~3日で消失した。
今回の研究を支援した米国立生物医学画像・生物工学研究所(NIBIB)のRoderic Pettigrew氏は「将来、絆創膏サイズのパッチは、ワクチン接種のあり方を変える可能性がある。ワクチン接種の希望者にパッチを郵送すれば、自分で接種できるうえ、この技術ならインフルエンザ以外のワクチンにも応用できる」と説明する。
付随論説を執筆した英イングランド公衆衛生局のKatja Hoschler氏らは「価格の安さ、安全性、保管の簡便性、耐久性などの優れた特徴があるため、医療資源の乏しい地域に住む人や、ワクチンを受けたがらない人にも、理想的な選択肢となる」と推奨している。
米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏も「標準的なワクチンは何度も常温に曝されると力価が失われる場合があるが、このパッチは冷蔵保存の必要がなく、使用期限が長い」とメリットを指摘する。
筋肉注射から痛みを伴わないインフルエンザワクチンパッチへ。受診者に負担を与えない低襲侵のワクチン接種の主流になる日は近いかもしれない。