外反母趾の原因は靴ではなく歩き方(depositphotos.com)
足の親指のつけ根が「く」の字に突き出して変形する「外反母趾」。突き出した部分が靴に当たって腫れ上がり、痛みが生じることも多い。
足に痛みが生じると、歩くのが苦痛になる。また、痛みをかばうために姿勢も悪くなる。こうして日常生活に悪影響が現れる……。
外反母趾は、ヒールの高いパンプスや窮屈な靴で足の親指が圧迫されることが原因だと考えられがち。しかし、『外反母趾は「ゆりかご歩き」で治る! 』(マキノ出版)の著者である古屋達司氏(柔道整復師)は、「靴を元凶とする考えは、見直すべきです」と話す。
これまでに古屋氏は25年前から外反母趾の治療に取り組み、4000人以上の症状を改善させてきた、その道のエキスパートだ。
古屋達司『外反母趾は「ゆりかご歩き」で治る! 』(マキノ出版)
「外反母趾になってからハイヒールを履かなくなった女性でも、症状が悪化していくケースは少なくありません。それに普段はスニーカーで過ごす10代の野球少年やサッカー少年も、外反母趾になっているのです」と古屋氏。
足に負担をかけない靴を履いているのに、足の変形が進んだり痛みが悪化したりしているのが現実だ。
では外反母趾の本当の原因はなにか? 自分で改善できる方法はあるのか?
原因は「足の指を使わない歩き方」
「外反母趾の原因はズバリ『足の指を使わない歩き方』です」と古屋氏は指摘する。足の指を使わなければ、なぜ外反母趾になるのだろうか?
私たち人間の足は、両足を合わせて56個の骨で構成されている。全身の骨の数が約200個なので、全身の約4分の1に当たる数の骨が足にあるということだ。
こうした多数の骨は「靱帯」でつながれ、腱と筋肉が付着して、アーチ形の構造をしている。その理由は、地面からの衝撃や体重の負荷に耐えられるようにするためだ。
足の裏には、次の3つのアーチがある。
①内側縦アーチ:一般に「土踏まず」と呼ばれている部分
②外側縦アーチ:足の小指のつけ根とかかとを結ぶライン
③横アーチ:足の親指のつけ根と小指のつけ根を結ぶライン
古屋氏によれば、「横アーチ」が外反母趾と密接にかかわっている。横アーチを構成する筋肉は「指のつけ根の関節」とつながっている。
歩く動作の中で足の指に体重が乗るときに、横アーチの筋肉と指のつけ根の関節が連動して体重を支えているのだ。
しかし「足の指に体重が乗らない」、つまり「足の指を使わずに歩いていたら」、横アーチの筋肉も使われずに衰えていく。「歩くときに足の裏全体でペタッと接地したり、ドスドスと音を立てていたり、外股や内股になっていたりすると、足の指を使っていません」と古屋氏。
その結果、横アーチは体重に押しつぶされて、足の横幅が広い「開張足」になる。開張足になったら、足の指の筋肉のバランスが崩れる。そして「親指が小指側に引っ張られ」て外反母趾になるのだ。
「私が今までに見てきた外反母趾の足では、すべてに共通して開張足が認められました」と古屋氏は話す。スニーカーばかり履いているスポーツ少年でも、足の指を使わずに歩く習慣があれば外反母趾になってしまうということだ。
足のトラブルには外反母趾のほかに、足の裏に炎症が起こって痛む足底筋膜炎、足の裏や指の皮膚が固くなって接地するたびに痛むウオノメなどが挙げられる。古屋氏によると「こうしたトラブルはすべて、足の指を使わない歩き方で引き起こされている」そうだ。