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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第53回】

DNA鑑定で「飼いネコ」の祖先が判明! 約6000年前にネズミ退治した「リビアヤマネコ」

「ツンデレ」し放題!リビアヤマネコは今も生きている

 古代の人々がリビアヤマネコを熱愛したのはなぜだろう?

 リビアヤマネコのエジプト変種は、アナトリア原産の野生ネコと外見が非常によく似ていた。Geigl氏によれば、野生ネコは縄張りを単独で行動し、階層的な社会構造を持たないため、家畜化に適さなかったが、リビアヤマネコのエジプト変種は、社交性と従順さを獲得したため、人々に愛玩される決定的な要因になったと推定する。

 また、イヌやウマと異なり、外見目的の交配が少なくとも最初の数千年間は行われなかったので、現在の飼いネコの体の構造、機能、動きなどは、野生ネコと酷似している。つまり、野生ネコの毛並みはすべて縞模様だが、品種改良が開始され、ぶち模様の色合いが初めて遺伝子に記録されたのは、中世の西暦500~1300年頃にすぎない。

 Geigl氏は「ネコの装飾的な品種を作るための繁殖計画が始まったのは19世紀頃だが、現在の飼いネコの外見も性格も行動も、古代の野生ネコとそれほど大きく違っていないはずだ」と説明している。

 となれば、「ツンデレ」し放題のリビアヤマネコは、今も生きていることになりそうだ。

 ネコを飼っているなら、ネコの尻尾をよく観察してみよう。トントンと床を叩く、垂直にピンと立てる、先端をかぎ状に曲げる、クルリと丸める。かと思ったら、遅刻したのを取り返すように急ダッシュする。「ツンデレ」どころか、かなりイラチの「スピード狂」ではないか。

 あれもこれも、狩人だった野生ネコの名残だろう。尻尾の振る舞いも、急ダッシュも、古代のリビアヤマネコと何ら変わらないなら、何とも不思議な気分になってくる。
(文=佐藤博)


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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