若い世代でも「セルクネグレクト」は少なくない(depositphotos.com)
家の中が足の踏み場もないほどゴミでいっぱいになっている。引きこもっているうちに体を清潔に保つことが億劫になり、長いこと歯も磨かず風呂にも入っていない……。
あなたの身の回りに、こんな人はいないだろうか?
今、何らかの理由で身の回りのことをしなくなって生活が崩壊状態にある、いわゆる「セルフネグレクト」に陥る人の増加が社会問題になっている。
セルフネグレクトは、巷で時々騒がれる「ゴミ屋敷」と密接に関連するものだ。不衛生な暮らしが長年にわたれば健康を害し、最後は「孤独死」という結果を招きかねない。
ニッセイ基礎研究所の2011年公表の調査では、1年間に孤立死を把握した高齢者のうち、79.6%にセルフネグレクトの疑いがあったという。
自分を「放棄」している人が1万人超?
セルフネグレクトという言葉に明確な定義はないが、ひと言でいえば「人として生活のための行為を行わない、または行う能力がないため、心身の安全や健康を損なうような状態に陥ること」となる。
虐待問題におけるネグレクトは「他者による世話の放棄・放任」だが、セルフネグレクトとは「自己放任」、つまり「自分自身による世話の放棄・放任」だ。「東京都高齢者虐待マニュアル」には、高齢者のセルフネグレクトの症状として次のような例が挙げられている。
●昼間でも雨戸が閉まっている。
●電気・ガス・水道が止められていたり、家賃などの支払いを滞納したりしている。
●配食サービス等の食事がとられていない。
●物事や自分の周囲に関して、極度に無関心になる。
●何を聞いても「いいよ、いいよ」と言って遠慮し、諦めの態度が見られる。
●室内や住居の外にゴミが溢れていたり、異臭がしたり、虫が湧いている。
内閣府が2011年に実施した調査によると、全国でセルフネグレクト状態にあると考えられる高齢者の推計は1万1000人。そしてこれはまだ氷山の一角にすぎない。
一方、米国の大規模調査では高齢者の約9%にセルフネグレクトが存在するという。さらに年収が低い人や認知症の人、身体障害者では15%に及ぶと報告されている。