エジプト人は「古代」と「現代」とでルーツが違う(depositphotos.com)
「古代エジプト」といえば、ピラミッド、ファラオ、ツタンカーメン、ヒエログリフ、ロゼッタ・ストーン、太陽暦、クレオパトラなどを連想するだろうか?
紀元前3000年頃に澎湃(ほうはい)として興きた第1王朝から、紀元前30年に共和制ローマがプトレマイオス朝を滅ぼすまでの数千年間。どのような歴史絵巻に彩られながら、人々の血脈と足音が黒い大地に刻まれて来たのか?
そんな想像力を激しく掻き立てる衝撃的な事実が明らかになった。
紀元前約1400年〜西暦400年頃に埋葬された古代エジプト人のミイラをDNA解析
ドイツのマックス・プランク人類史科学研究所のJohannes Krause氏らは、エジプト中部のナイル川沿いのアブシール・エルメレク遺跡で、紀元前約1400年〜西暦400年頃に埋葬されたと推定されるミイラ151体を発掘した。
そのうちの90体のミトコンドリアDNAを解析し、3体のDNAのゲノGWAS(ゲノムワイド関連解析)を行い、「古代エジプト人」と「現代エジプト人」のルーツを探求した。
その結果、「古代エジプト人」のミイラと「現代エジプト人」のDNA解析の結果、驚くべき真実が明かされた――。「古代エジプト人」は地中海東岸のアラブ諸国の人々に近く、「現代エジプト人」はサハラ以南のアフリカ人に近い事実が判明したのだ(『Nature Communications』オンライン版「HealthDay News」5月31日)。
今回の研究の目的は、古代エジプト人が受けた他民族による侵略や交雑によるヒトゲノムの変化と推移を探ることだった。
Krause氏によると「エジプトの高温、墓の中の高湿、ミイラに使用された化学物質の変質などによって、ミイラのDNAは損傷を受けやすい。今回のミイラのDNAの抽出・解析の成功は、古代エジプト人が歩んだ足跡を解明する大きな突破口になるだろう」という。