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【連載「死の真実が〈生〉を処方する」第39回】

自転車死亡事故を分析してわかったこと~約半数が左右の確認をせずに交差点に進入

ドライブ・レコーダーを解析すると……

 次に自転車と四輪車との事故について調べてみました。

 タクシーに装着されたドライブ・レコーダーのデータを元に、自転車乗員が事故および危うく事故になりそうになった「ヒヤリ・ハット例」のデータを解析しました。その結果、ヒヤリ・ハット例の6割以上が「単路を車両が直進し、その前方を自転車が横断する」という状況でした。

 自転車が見通しの良い所から飛び出してきた例では、自転車までの平均距離は19.5mで、その時の車両の平均速度は時速24.7km。見通しが悪く物陰から自転車が飛び出してきた場合、自転車までの平均距離は10.5mで、車両の平均速度は時速21.1kmでした。

 これらの例では、車両の運転者がプロのタクシー運転手であったため、直ちにブレーキをかけて事故を回避することができました。これが一般の運転者で、しかも高齢者であったならば、回避できないかもしれません。

 自転車が道路を横断する時に、しっかり左右確認を行えば、このような事態が予防できるのですが、前述のように多くの自転車利用者は左右確認をしていません。それではどのようにして事故を防げばよいのでしょうか。

自動技術に頼ることは有効か

 車両走行中に、自転車が前方に飛び出してきたことを検知したら、ただちにブレーキをかける――。これが有用な事故予防策と考えられます。

 最近、アクティブセーフティと呼ばれる自動ブレーキの技術に期待が寄せられます。しかし、自転車は歩行者とは異なった挙動をとり、自転車自体も高速で運転されている場合があります。

 そのため、歩行者と同じようなシステムでは事故を防げません。まだ、実用化できる有用な予防システムはないといえます。

 先に紹介した自転車乗員の死亡例でも、飲酒後の自転車利用、一時停止や左右確認の無視などが原因となっている例が見られます。やはり、最も求められていることは、自転車利用者に対して、交通社会参加者としての自覚を持ってもらうことでしょう。


連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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