がん探知犬1頭に3年!コスト500万円!トレーナーの不足も
ただ、課題は少なくない。
たとえば、がん探知犬は、犬種によって探知能力に個体差があるので、1日にこなせる検査数は限られることから、一度に50人〜100人もの識別が正確かつ迅速にできるか分からない。
がん探知犬は、遺伝的な要因や性格が異なるので、個体数を計画的・合理的に養成しにくい。才能や素質が優れていても、専門的な訓練を行える専任トレーナーも少ない。しかも、最大の難題は、がん探知犬の育成に1頭当たり500万円ものコストと、およそ3年の時間を要する点だ。
しかし、がんの臭いは、尿の他、呼気・汗・唾液・血液などにも含まれ、がんのある部位によって異なる。がん探知犬は、人間の嗅覚よりも100万倍~1億倍もの高い嗅覚能力を備えているため、わずかな臭いの差異や、かすかな残臭を嗅ぎ分けている厳然たる事実は揺るがない。
盲導犬、救助犬、警察犬、麻薬探知犬など、犬は驚異の天才的な嗅覚能力を活かし、視覚障害者のアシスト、災害・事故による被害者や行方不明者の捜索・救助、被疑者の特定・逮捕など、様々な分野で大活躍している。
日本医科大学の研究グループによると、がん細胞が増殖すると、がん細胞内のタンパク質が変質するため、揮発性の有機化合物(VPCs)が産生され、発症の早期に尿中、血液中、呼気に排出される。がん探知犬が嗅ぎ分ける揮発性の有機化合物(VPCs)をより精確に特定する解析技術や解析センサーの開発が喫緊の研究テーマだと指摘する。
がん探知犬によるがん検診が、今後どこまで普及するのか興味は尽きない。
(文=編集部)