1歳未満の乳児に蜂蜜を絶対に与えてはいけない!
胎児は無菌状態のまま子宮内で成長する。胎児が産道に入り、経膣出産するや否や、膣や肛門に棲息する母親由来の微生物群の一斉攻撃にさらされる。やがて、微生物は乳児の体表や体内に深く侵入し、腸にも棲みつく。
このようなマイクロバイオータ(微生物相)の形成は、出産に伴って急速に進むが、出生直後は、乳児の免疫系も消化器系も未発達なうえ、腸の粘膜層も薄いため、乳児の身体への侵襲リスクは必然的に高まらざるを得ない。
しかし、母乳にプロラクチンとオキシトシンというホルモンが生産されるので、母乳哺育(栄養)によって乳児のホメオスタシス(恒常性)は強化される。
つまり、母乳に含まれる免疫グロブリンA、オリゴ糖、必須脂肪酸、グルタミン酸をはじめ、タンパク質(ラクトフェリン、アルギニン、アルブミン、カゼイン)、ビタミン(ビタミンA・D・E・K、葉酸)、ミネラル(カルシウム、ナトリウム、鉄分)などが乳児の受動免疫を高めるので、腸の粘膜免疫系が強まる。
その結果、マイクロバイオータの多様性が深まり、有用菌(善玉菌)や有害菌(悪玉菌)が共生する腸内フローラが形成される。さらに、乳児の成育に伴って、マイクロバイオータは成長を遂げながら、第2のゲノムと呼ばれるマイクロバイオーム(2500万個の遺伝子全体)の生成につながっていくので、乳児のホメオスタシスが安定する。
このような生命科学の根拠から母乳哺育(栄養)の重要性が明らかになった。AAP(米国小児科学会)やWHO(世界保健機関)、日本産科婦人科学会などは、生後6カ月の母乳哺育(栄養)と、1歳までの母乳と固形食の併用を推奨している。
厚生労働省は、1987年以降、1歳未満の乳児に離乳食として蜂蜜を与えないように指導。都も注意喚起している(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6235873)。
大人が空中を浮遊するボツリヌス菌の芽胞を吸入・嚥下しても、腸内フローラが成熟していれば、芽胞は発芽しないので、食中毒は起きない。
したがって、乳児の腸内フローラの成熟度が乳児ボツリヌス症の発症を決定しているのは明白だ。つまり、母乳哺育(栄養)を続ければ続けるほど、マイクロバイオータ(微生物相)の多様性が深まり、腸内フローラが育つため、ボツリヌス菌の毒素は増殖しにくくなり、乳児ボツリヌス症の発症の予防につながるのだ。
乳児ボツリヌス症や乳幼児突然死症候群を防ぐために、1歳未満の乳児に蜂蜜を絶対に与えない! これは覚えておきたい。
(文=編集部)
*参考文献/『日本小児科学会雑誌』2015年1月号「わが国の乳児ボツリヌス症の実状」