AIが恋人になる日は来るか?
汎用人工知能が完成すれば、人間とAIが恋に落ちる日も近いのだろうか?
著名なAI研究学者ベン・ゲーツェル氏によると、AIが人間を凌駕するシンギュラリティ(技術的特異点)に達すれば、人知が及ばない爆発的なブレークスルーが起きる。
その刹那、進化したAIは、人間の能力を遥かに超越した知能を発揮して、宇宙を探索したり、未知の領域を発見したり、人類が知らない高度な叡智を創造するレベルに到達する可能性がある。
そのような卓越した汎用人工知能が人間の恋愛対象になる確率は低い。なぜなら、AIの意識レベルは人間の意識レベルをすでに超越しているからだ。AIが恋愛対象になるとしても、ほんのわずかな期間にとどまるので、「束の間の愛」で終わるかもしれない。
だが、恋愛感情が生まれなくても、人間並みの知能を獲得したAIなら、人間の意識レベルまで降りて来て、人間にやさしい言葉を投げかけるかも。楽観的な見込みは捨てたくない。
AIの未来予測は実に楽しい。あくまでもSF(サイエンス・フィクション)だ。その恩恵やポテンシャリティが莫大なら、予測が外れてもだれも傷つかない。大当たりして、儲ける人はあっても、迷惑を被る人は少ないだろう。AIはそれほど大きなアドバンテージを内包したイノベーションだ。
もしもAIとの恋愛関係が成立するとして、そこにはどんな未来が待ち受けているのか? AIが労働や雇用を奪う。意思を持って暴走し、人類の存亡を脅かす。そんなネガティブな予測は脇に置き、人間とAIの恋愛関係は、どうすれば成り立つかだけを想像しよう。
いろいろな意見があるはずだ。たとえば、AIは思考できても、感情は持てない、AIには性別という概念がない、恋愛感情が芽生えるシチュエーションや恋愛スタイルが掴めないなどだ。そう考えると、人間とAIが恋に落ちる未来がたやすく到来するとは、なかなかイメージできない。
AI恋愛ビジネスが始まる!?
しかし、こんな考え方もできる。疑似恋愛だ。AKB48や楓46などのアイドルグループが展開している握手会も、アイドルとファンが手を触れ合う疑似的な恋愛行為だ。
また、たとえばクリプトン・フューチャー・メディアが発売しているボーカル合成キャラクターの初音ミクにAIを搭載すればどうだろう。魅力的なキャラに変身したら、憧れたり、熱狂するマニアが一気に増殖するだろう。
初音ミクのようなキャラが人間の知能や感性を備えれば、AIによる恋愛ビジネスの起爆剤になるはずだ。アイドルや架空のキャラとの疑似恋愛は、好奇心を熱く刺激し、さりげないリアティを感じさせるからだ。
このようなAIを搭載したキャラとの疑似恋愛は、新たなAI恋愛ビジネに発展する可能性が大いにある。AI恋愛ビジネスは、秋葉系のヲタク、萌えのサブカルチャー、アイドル産業の延長線上にある。
異性と上手に付き合えないシャイな人でも、AIにならストレートに気持ちを打ち明けられるかもしれない。老若男女を問わず、自発的な恋愛に発展する可能性がある。もちろん、精神的にも肉体的にも精巧なヒューマノイドを作るテクノロジーが絶対条件になるだろう。
映画『her』に登場したサマンサ(AIの声)とアンド ロイド型ロボットを融合すれば、精神的にも肉体的にも人間に近いヒューマノイドと愛し合える。さらには、AIが歌舞伎町や五反田界隈のセックス産業に進出しないとも限らない。
あれこれと空想を巡らして来た。AIは恋人になれるのか? AI恋愛ビジネスは起ち上がるのか? AIは、「人間とは何か?」「恋愛とは何か?」を問いかけている。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。