「食べられる虫」の数は1900種
先立つ2008年のFAO資料によれば、アジア29カ国・南北アメリカ23カ国・アフリカ36カ国で「虫」が食べられている。また、最近の報告書でも「食べられる虫」の数は1900種類に上る、と公表されている。
その味覚や調理法の一例を挙げてみると、美味なスナックとして米国や豪州、メキシコやアフリカでも広く堪能されているのが蜂(ミツバチやスズメバチ)。大変カロリーの高いバッタなんかはたっぷりの油で揚げると最高らしく、レモン汁が似合うらしい。
また、オランダで大人気というコオロギも「普通の肉と比べても栄養価が高い」と研究者らが評価し、とりわけマグネシウムの高さは「ビーフ比で5倍」なんだとか。
実際、プロテインバーからハンバーガーに使うパウダーに至るまで、食品業界の陰の主役としても貢献しているコオロギ。あなたも知らぬ間に、その味覚に触れているクチかも。
一方、シチューの風味を引き立てるためにさまざまな国や地域で重宝されているのが、なんとカメムシ。彼らが身を守るための独特臭は弱火で煮ることで取り除き、あとはスープに入れるなり、サンドウィッチの具で挟むなり……という身近な存在なんだとか。
あるいは、およそ38%のタンパク質をもち、ベネズエラ産の種に至っては64%の数値を誇るシロアリも、シチューやカレーやサラダまでと幅広く用いられている人気食材なのだ。
タンパク質豊かな珍味だが、まさか「G」を食べるとは!
でも、でも。まさか、まさか。アレだけはどこの国の人も食べないよね、アレだけは!? と、ここまで恐る恐る読み進めてきた、「アレだけは大嫌い、もう存在自体が許せない」という方々へ。
あれだけ注意を呼び掛けたにもかかわらず読んでいただいたご褒美というのもナンですが、そう、アレこと「ゴキブリ」もタンパク質豊かなりっぱな珍味。種によっては人気の昆虫食で、なんでもBBQの煙で燻し、ホワイトペッパーをふりかけると美味しいのだそう。
日本でも近年、『昆虫食入門』(内山昭一/平凡社新書)という新書が出たり、同じ昆虫料理研究家が監修した単行本『食べられる虫ハンドブック』(自由国民社)が話題を呼んだりと、なんだかガサガサ、いやじわりじわりと浸透中の気配が濃厚だ。
聞けば、高タンパクな昆虫はビタミンや食物繊維、ミネラルも豊富で栄養価が高く、自ら摂取した栄養の40%を体質量に変換できる特性をもつという。これを魚の10%、牛の1~3%という変換率と比べると、かなり生産効率の良い食料源であることが解る。
もちろん、そこらで捕獲した昆虫をいきなり口に入れるのは考えものだ。衛生面から一晩絶食させて脱糞させたり、火を通したり、農薬の付着にも気を付けたい。有害な種類の事前知識も必要だし、甲殻類アレルギーや風邪の症状持ちにも昆虫食はNGだという。
が、ある調理実習イベントの名称が「ムシ食い三昧!」だった、なんて逸話を聞くと「虫を食う女優」川栄李奈さんの、幼少期のアンテナ(触覚)の鋭さがわかろうというもの。
さて、冒頭の〇内の正解だが、前者が「クモ」で、後者が「タランチュラ」である。ギョッ!
(文=編集部)