消費者にとってより重要なのは品質や安全性
そこで思うに、「トクホ」や「機能性表示食品」の“看板”であるエビデンス(科学的根拠)は本当に信頼の最優先事項なのか、という疑問だ。近ごろは、消費者団体も口を開けば「エビデンスが重要!」と訴える。
しかし、この「エビデンス」は、逆に消費者へのごまかしに利用されている場合がある、と私はかねてより疑問視している。
とくに「トクホ」や「機能性表示食品」で推奨されるヒト臨床試験(RCT)は、近代医学の優れた尺度ではあるが、「食品」、「健康」という、どちらも複合的でファジーな性質を持つ対象において有効なのかどうか、腑に落ちないでいる。
しかも、RCTで有意差があると結果がでれば、“葵の紋所”さながら誰もが文句を言えなくなる。その紋所を掲げるためにときには億の費用をかけ、それが商品価格に上乗せされる。
しかし、消費者にとって大切なのは、個々の商品の有効性の証明よりも、品質や安全性であるはず。もっと言えば、商品に含まれている有効成分が明示されていれば、その成分が健康にどんな作用があるのかということは、すでにあちこちで情報提供されているので、ちょっと調べれば誰でも簡単にわかる。一方、品質や安全性はとても見えにくい。
お金をかけて機能性のエビデンスは取っているのに、品質管理や安全性対策には経費をかけない、という企業は多い。そこに経費をかけても、消費者にはわからないからだ。ロットごとに成分分析や安全性試験を行っているという話はめったに聞かない。
何億円もかけて「エビデンス」を取り、「トクホ」のお墨付きをもらえば、誰もが信頼してくれてよく売れる。しかし、成分チェックなどしないので、たとえ有害物質が混入していても知らぬが仏、という有り様をこれまで許容してきたのだ、ということを改めて考える。その契機となる事例ではないかと思うのだ。
※編集部注
取り消し処分の対象となったのは、「ペプチド茶」「ペプチドストレート」「ペプチドスープEX」「ペプチドエースつぶタイプ」「食前茶」「豆鼓エキスつぶタイプ」の6商品