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【連載「死の真実が“生”を処方する」第26回】

アナフィラキシーショックの原因が「薬」という皮肉~5分以内の処置が命を左右

アナフィラキシーショックは薬物が原因になることも

 アナフィラキシーショックを起こす原因物質について、米国には詳細な調査報告があります。

 米国では、人口の0.5~5%が、蜂を含む虫類の毒によってアナフィラキシーショックを起こしています。これよりも頻度は少ないですが、食べ物によるアナフィラキシーショックでは、年間100人程度が死亡しているそうです。

 原因となる物質は、ピーナツ、牛乳、卵、甲殻類など。しかし、皮肉なことに、最もアナフィラキシーショックを起こしている原因は、治療のために用いられている薬物なのです。

 どうして起こるのかというと、過去に一度使用した薬物を体が記憶して、その薬物を認識する抗体が作られる。すると、次にその薬物が使われると抗原-抗体反応が起きるのです。これがアレルギー反応の始まりです。

 ほとんどの薬物にはこのような心配は要りませんが、人によっては薬物アレルギーといって、ある種の薬物に対して大きなアレルギー反応を起こす人がいます。ペニシリンの注射を受けてショック状態になるという話は、比較的以前からありました。

 最近では、予防注射を受けた直後にショック状態になったということもあります。これらはすべて薬物によるアナフィラキシーショックです。そこまでひどくはならないものの、ある薬物を飲むと、全身にじんましんが出る、吐き気がするという経験がある方もいるかもしれません。これも薬物アレルギーの反応です。

 薬物アレルギーは、ほかにアレルギーの病気を持つ人に起こりやすいといわれています。ある薬物を初めて使った時に些細な変化があった場合は、薬物アレルギーの前触れの場合があります。何らかの薬物を使って違和感があった時は、必ず医師に申し出ましょう。

CT検査も要注意

 CT検査では、血管内に造影剤という薬を点滴してから撮影することがあります。血液が通る所を白くして、周囲との区別を付けるという造影CTです。病気や怪我があるか、その広がりがどの程度かを判断するための検査です。

 しかし、造影剤は、高い確率でアナフィラキシーショックを起こすことがあります。造影剤を用いる検査をする時には医師から十分な説明がなされますし、検査を行う時は、必ず近くに医師が待機して、万一の場合に備えます。

 ですから、造影剤を点滴して急に具合が悪くなったとしても、呼吸と循環を保つ処置がなされれば、命を落とすことはないでしょう。

 以上のように、アレルギーは身近な国民病となってきています。少々のかゆみやくしゃみから、命を落とすアナフィラキシーショックまでさまざまです。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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