関西人同士の診療は本音炸裂!?
著者は、青森公立大学経営経済学部の植田栄子准教授(社会学)。植田准教授は、東京・大阪・名古屋の一般内科外来通院患者と医師との診療談話111例(男性患者48名、女性患者63名、平均年齢60.2才)を録音や文字化して次の分析を試みた。
①擬音語・擬態語の使用の全体的傾向と、性差・年齢差・地域差からの影響を分析する。
②擬音語・擬態語の疾患別(咳・喘息、耳鳴、疼痛)の使用の特徴を分析する。
③相互行為的談話分析から見た擬音語・擬態語の使用の特徴と、効果的運用を分析する。
結果、①の全体的傾向として、診療会話中にオノマトペが観察されたのは、東京が44例中16例(3割強)、大阪が43例中21例(半数近く)、名古屋が24例中5例(2割程度)。
この出現率の優位からも、しゃべくり漫才的な大阪の傾向が読み取れて面白い。
計111例中のオノマトペ出現率は42例(37.8%)だった。しかし、医師先導型の観察事例が多い点から、医師側の発話が多いと患者側の発話も増加傾向にあるのが認められた。
医師が「脈打つ、耳鳴りやったっけ? それとも、ザー!?」と訊けば、患者側も「ザーってなる!」と、当意即妙で応じるようなやりとりだ。
そんなやりとりの際、医師側は医学専門用語である「漢語」や「カタカナ外来語」を併用するのも一般的だ。
「発作になったの? ゼーゼーヒーヒー、なって?」(漢語+擬音語・擬態語)とか、「シュッシュって、ステロイドしたって」(擬音語・擬態語+カタカナ外来語)などだ。
後者を例に、植田準教授は論文のなかで、こうまとめている。
「医師は主観的・感覚的・曖昧である擬音語・擬態語と、客観的・論理的・具体的である医学専門用語のカタカナ外来語とを併用して、より正確で患者にとって理解しやすいコミュニケーションを成功させている」
科学的正しさに加え、NBM(物語りと対話に基づく医療:Narrative Based Medicine)を求める患者が増えている。また、植田準教授はこうも書いている。
「患者は日常言語で端的に症状説明を行った結果、自分自身のことばによる主訴説明を達成して満足度が上がり、診療時間の短縮だけでなく、患者の理解度が上がることから結果的に治療効果の向上も期待できると考えられる」
患者のあなた側からも「キリキリ」「ヒリヒリ」「キュルキュル」などの擬音語・擬態語で、積極的かつ具体的に症状を訴えることは、双方にとってメリットのあることなのだ。今度の診療時からさっそくどうぞ。
(文=編集部)