モンスター患者は誤診率が42%もUP!?(shutterstock.com)
どこを見回してもクレーマー気質の人が増えているように思える昨今、教育現場では以前から教師や学校を困らせる「モンスターペアレント」が問題視されてきた。
ここ数年は医療の現場で医師や看護師などに理不尽な要求をする「モンスターペイシェント(患者)」も増え続けているようだ。
2013年、医療従事者向けサイトを運営する「ケアネット」が、モンスターペイシェントを「自己中心的で理不尽な要求、果ては暴言・暴力を繰り返す患者やその保護者、家族等」と定義し、会員医師1000人を対象に調査を実施。
その結果、7割近くの医師がモンスターペイシェントに対応した経験を持っており、頻度が月に1度以上という医師も1割強にのぼった。
内容は「スタッフの対応が気に食わないとクレームをつける」が60.5%を占め、そのほかに「自分を優先した診察の要求」や「待ち時間に関するクレーム」「過剰投薬の要求」「治療法や治療薬についての強硬な主張」が続いた。
フリーコメントには「モンスターペイシェントにより心身ともに疲れ果てて、うつ病で半年入院」「個室で診察している際に監禁された」などの訴えや、「院外なら暴行罪や脅迫罪となるが病院内だと不当に軽く扱われる」といった憤りも。
診療現場でのモンスターペイシェント問題の深刻さが浮き彫りになっている。
モンスター患者の誤診率は42%も高いという驚くべき研究が
こうしたモンスターペイシェントに対して警鐘を鳴らす研究結果が、イギリスの医師会誌「BMJ Quality & Safety」(電子版)の3月7日号に発表された。それによると、問題行動が多い患者は医師から誤診される危険性が高まるという。
医師を苦しめる行為が原因で適切な治療が受けられなくなり、結局は患者本人に返ってくるというのだ。
この研究は、オランダ・エラスムス大学医療センター・ロッテルダム医療教育研究所准教授のSilvia Mamede氏らが実施。
この内容の実験を臨床で行うことは難しいため、医師と患者が向き合う問診での「架空のシナリオ」を制作し、医師たちから病名の診断と治療法の回答を求める方法で行われた。
まず、いくつかの同じ症例について「普通の患者」と「非協力的な患者」の2つのシナリオを制作した。「非協力的な患者」は、医師に対して理不尽な要求が多かったり、医師の助言を無視したり、指示に従わなかったりするという設定だ。
最初に、ロッテルダムの開業医63人を対象にこれらの架空のシナリオを診断してもらった。
すると、単純な症例の場合では「普通の患者」と比較して「非協力的な患者」で診察ミスが6%多くなった。さらに複雑な症例で試すと、「非協力的な患者」の診察ミスは42%も多くなったという。
さらに、内科研修医74人を対象とした2件目の実験でも同様の結果がみられた。やや複雑な症例において、非協力的な患者の場合の診療ミスは、普通の患者より20%多くなった。