あなたは防犯カメラでの管理社会を望みますか?
顔認証システムは、音楽ライブの入場管理だけでなく、病院の再来受付や介護施設の無断外出や徘徊の防止にも活用されている。
たとえば、急性期病院の医療法人社団一成会たちばな台病院(横浜市青葉区)のケースだ。たちばな台病院は、受付窓口に患者が滞留する状況があったため、受付プロセスの簡素化や省力化に取り組んできた。
2013年8月、たちばな台病院は全国に先駆けて再来受付システムを採用し、すべての診療科を予約制に切り替えた。再来受付システムは、最新のバイオメトリクス(生体認証)技術を集約したNECの顔検出/顔照合エンジン「NeoFace」を搭載。
スピーディかつ高精度に患者を識別できる。認証に要する時間はわずか1秒だ。
再来院した患者は、再来受付システム端末の画面で予約した診療科目を選び、カメラに顔を向けるだけで受付を完了できる。診察券を出したり、受付窓口で職員と話す必要はない。患者の抵抗感が少なく、同意を得やすいので、受付から診察までの流れがスムーズになった。
また、電子カルテシステムと連携しているため、患者のリストバンドや点滴薬剤瓶に顔写真をプリントしておけば、診療時や投薬時のエラーを防げる。しかも、個人情報の保護、セキュリティの強化、ホスピタリティの向上にもつながっている。
一方、顔認証システムは、介護施設の無断外出や徘徊の防止にも一役買っている。
たとえば、リカオンの顔認証徘徊防止システムLYKAONは、高齢者、要介護者、認知症患者などの無断外出や徘徊行動を監視・警告し、対象者の安全を見守りつつ、介護施設の負担を軽減するために開発された。
どのようなシステムなのか?
まず、無断外出の恐れのある対象者の顔写真を事前に撮影し、情報を顔認証システムに登録する。
対象者が出入口から無断外出しようとすれば、24時間稼働している監視カメラが対象者をキャッチ。顔認証システムが対象者の情報を瞬時に検知すると同時に、検知アラート(警告灯)とブザーによって無断外出の発生を知らせる。
管理者やスタッフが近くにいなくても、業務中で手が離せなくても、対象者が無断外出しようとした瞬間に無断外出の発生をスマートフォン、携帯電話、PHSにリアルタイムに通知する。
検知日時や検知した対象者の名前が即座に通知されるので、状況把握が迅速・正確に行えるとともに、スタッフ全員が情報を共有して対象者を安全・迅速・効率的に保護し、無断外出による事故や行方不明を未然に防ぐことができる。
対象者の顔による非接触認証のため、タグ、センサー、カードなどを持ち歩く煩わしさがない。常に目を光らせて監視しなくてもいいので、つきっきり介護による精神的・肉体的負担を軽減しながら、人材不足の解消につながるのも大きなメリットだ。
このように音楽ライブの入場管理にも、病院の再来受付にも、介護施設の無断外出や徘徊の防止にも貢献している顔認証システム。2020年の東京五輪では、交付が始まったマイナンバーカードを活用する顔認証システム導入の動きもある。
いまや国内に数百万台あるといわれる防犯カメラ。そこに顔認証システムがリンクすれば、われわれのプライバシーのほとんどが検索可能になる。防犯と管理VS個人情報の漏洩やプライバシーの侵害。きちんとした国民のコンセンサスが得られているかがはなはだ疑問だ。
(文=編集部)