熊本市、札幌市、神奈川県は「殺処分ゼロ」に
実際に手を下すことになる自治体も、この状況を放置しているわけではない。
熊本市は2014年に「犬の殺処分ゼロ」を達成し全国から注目を集めた。熊本市動物愛護センターでは「職員が憎まれ役になってもいい」と安易な引き取りをやめ、不要になったペットを持ち込む飼い主を説得することから始めた。「この犬と暮らした日々を思い出してください」「引き取り手を真剣に捜しましたか?」。それでもひかない飼い主には、殺処分に立ち会わせることもした。さらには里親探しにも取り組み、やがてゼロを達成できたという。
その後、札幌市でも「犬の殺処分ゼロ」、神奈川県は「犬猫ともゼロ」を達成した。できないことはないのだ!
民間でもNPO法人などの活動がさかん。たとえば一般社団法人「ちよだニャンとなる会」は、千代田区と連携して飼い主のいない猫問題に取り組んでいる。主な活動はTNR(一時保護/去勢・不妊手術/元の場所に戻す取り組み)で、去勢/避妊した猫の耳を小さくV字型にカットすることで目印とした。同会は同時に里親募集も行なっているが、これらの活動が功を奏し、千代田区は2011年に全国でいち早く「猫の殺処分ゼロ」を実現した。
女優の杉本彩さんも立ち上がった。人間と動物との共生、動物福祉の充実などを目的に、「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」を立ち上げ、この2月22日に公益認定1周年のパーティーを開催したばかり。イベント、シンポジウム、研修・セミナーの開催など、そのネームバリューを生かして精力的に活動を行っている。
最近の杉本さんの活動の中で目を引くのは、生体販売をやめた岡山県のペットショップ「シュシュ」への視察だ。物販スペースをそのまま残し、生体販売していたスペースを動物愛護団体の支部として登録。保護犬を一時預かりし、里親へとつなげているそうだ。売上は落ちたというが、この活動を「未来のペットショップ」として杉本さんは高く評価。この取り組みが全国に広まるべきだと言っている。
そのいっぽうで、育ちすぎた犬猫を安易に処分するペットショップ、劣悪な環境の下でひたすら繁殖を続けさせるブリーダーなどもまだまだ多い。ペット業界の自浄作用がどこまで進むかが、犬や猫の殺処分を減らす鍵となるのではないだろうか。
(文=編集部)